高校に入って、山口と天城と一緒に居る事が当り前になりつつあるこの頃。少しの違和感を感じた。そういえば中学の頃、塾で会うと必ず「幼馴染君」の話が出ていた。いつも楽しそうに話す天城に「いつか会ってみたいね」と山口が返した事を思い出す。それが、いつからだろうか。天城の口からその話題がぱったりと無くなったのは。いつから、天城は元気がないのだろうか。そりゃあ、今だってすごく楽しそうではある。でも、何かが足りない。

「山口、天城の幼馴染の話覚えてる?」
「うん、覚えてる…けど、天城ちゃんまったく幼馴染の話しなくなったよね」
「そうだね」
「それから、あんまり元気ないよね。空元気って言うか」

山口も気付いていたようだ。ふと、思い出す。天城が青城に行きたがっていた理由。確か、幼馴染が青城に行くから一緒に行きたい、という不純な動機だった。さてそれが何故烏野に来ているのか。何があったのか。



「そういえば、今度の練習試合青城だったよね」
「そうだね。幼馴染君バレーやってたって言ってたね」
「…よく、覚えてるね山口」
「ツッキーだって憶えてるくせに。で、探す?」
「は、そんな面倒事するわけないでしょ」
「じゃあ俺が探してみようかな」
「勝手にすれば…ちょっとくらいなら手伝ってあげるよ」

ツッキー素直じゃないなぁ、なんて山口が笑うから思いっ切り殴ってやった。取りあえず、王様あたりにでも探りを入れてみるかな。






▽△▽


「天城ちゃん、今日はツッキーと2人で作戦会議だからごめんね!他の人とお昼食べてね!」そう山口君に言われてしまい、一人校舎裏にあるベンチに座っていた。意外と穴場で誰も来ないお気に入りの場所だ。…別に友達が居ないわけじゃないもん。味気ないお昼を一人で食べ、お茶を飲んで一息。ああ、平和。ふと、思い出す。こういう静かな時、隣には国見君が居て、特に何も話すわけでもなく二人で一緒に居たなぁ。…寂しい。そんな事を考えていたらふわふわと青い花が宙を舞った。あ、まずい。咲いてる。気付いた時にはベンチが花だらけになっていた。

「うわっ、なにこれ花だらけ」
「ひゃ!?」
「あ、ごめんごめん。驚かせちゃって」
「いえ…」

いつから居たんだろうか、泣き黒子の…多分先輩がそこに居た。「頭にも花たくさんあるぞー!」なんて頭に乗っかった花を叩き落としていく。そのまま何故か頭を撫でられた。

「ひとり?」
「え、あ、えと…友達今日用事があって?今日だけ一人です。ぼっちじゃないです」
「そっかー!それは安心」

どうやら友達が居ない人と思われたらしい。…そういえば友達づくりしてなかった。ぼっちと大差がないじゃないか。「よし、ぜんぶとれた!」と言う先輩にお礼を言う。

「君の名前は?」
「1年4組の天城さくらです」
「3年4組の菅原孝支です。よろしく天城さん」
「よろしくです?」
「月島と山口と仲良い子だべ?俺、バレー部の先輩だから」
「バレー部でしたか、それはそれは…月島君と山口君には大変お世話になっています。今思うと私の友達2人しかいませんでした」
「じゃあ俺と友達になる?」
「ん?」
「うん?」
「友達ですか?先輩が?」
「先輩だからって、友達に慣れないわけじゃないベ?」
「え、そうですね?」

じゃあ友達、と菅原先輩と握手をした。コミュニケーション能力が高い人です。人懐っこい笑顔が、なんというか爽やかです。

「友達、ですか…友達…」
「嫌?」
「ぜんぜん!」
「じゃあ友達」

なにか、身体がぽかぽかとしてきました。頬を押さえて、えへへ、と笑うと何かが舞ったのがわかりました。え、ちょっとまって。これって「……ひっ」と私から引き攣る声が出ました。あ、友達になった瞬間友情が崩れます。

「ん…桃色の花?なんか随分小さくて可愛い花だなぁ」
「え、えっとその、これは」
「おお、また頭の上が花でいっぱい」
「せ、先輩!」
「どうした?」
「いや、どうしたじゃなくて!特に気に留めること無いんですか!?」
「花のこと?ごめんね天城さん、実は最初から見てたんだ」

息が止まる。え、最初からってことは…ベンチに青い花がいっぱいになるところも?サァっと顔が青ざめるのがわかった。

「いやー花の妖精かと思った。可愛いしほわほわしてるし」
「……ええ?」
「うんうん、可愛い可愛い」

…この人、あれだ。お父さんとお母さんと同じ人種の人だ…!私が両親に病気の事を告白したときあの人たち「やだお父さん、私たちの娘、花の妖精みたいよ」「そうみたいだな母さん。…妖精って言うより天使じゃないか?」「そうね天使ね」「天使だな」「今日は赤飯ね」「おめでたいからな」なんて阿呆らしい会話を奇病を患う娘の前で言っていたのだ。医者の先生が言った通り、脳内花畑だった。そんな同じ思考回路をもつ先輩。

「あの、先輩。気持ち悪くなんですか?」
「なんで?」
「…なんで、って」
「あ、無神経でごめんな?苦しかったりする?」
「苦しくは、ないです」
「じゃあよかった。不思議な…病気?だな。でもなんかファンタジーっぽくていいよな。可愛いし、綺麗だし」
「…恥ずかしいのでそれ以上言わないでください」
「友達って言ったけど、なんか天城さん妹っぽい」
「菅原先輩も、お兄さんみたいです…私の両親にそっくり」
「じゃあお兄ちゃんって呼んでもいいんだよ?」
「よ、呼びませんよ…!」
「それは残念」
「本当に残念そうにしないでください!」

さくらちゃんよかったらバレー部見学においで。俺も嬉しいし、月島も山口も喜ぶと思うから。なんてまた頭を撫でて菅原先輩は行ってしまった。…自然な流れで名前で呼ばれた。ふわふわと桃色の花が私の周りで舞った。


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