結局、第一志望だった青葉城西高校には受験しなかった。青葉城西には知り合いが多すぎる。それは、これからそこへ行くであろう同級生であったり、国見君軽油で知り合った先輩だったり。バレー部でなくても、北川第一の生徒は大方青葉城西に進学するため、私は青葉城西を受けるのを止めた。
流石に、白鳥沢に行ける頭を持ち合わせていなかったので、烏野高校へ受験した。そして問題なく合格通知を貰う。その合格通知は、一度見て、引き出しの奥へと仕舞った。こんなもの、国見君に見つかりでもしたらなんて言われるか。

あれから少しずつ、国見君と距離を置く様になった。元々違うクラスだったから、意図的に会おうだなんて思わなければ案外、校内で国見君と合う事もなかった。放課後は国見君は部活があったし、私も塾があったからどんどん国見君と顔を合わせることは減って行った。

嫌われたくなくて突き放されたくなくて、自分から距離を置いている自分に笑ってしまう。なんて矛盾。大丈夫、話さなくても、一緒に居なくても嫌われてさえいなければ私は嬉しいから。

卒業式も、私は国見君と目を合わせることなく、母校とサヨナラした。





――国見君がどんな気持ちで、どんな表情で私を見ていたかも知らずに。





▽△▽



「…ぴゃっ」
「ぴゃって何。ぴゃって」
「あ、天城さんだー。久しぶり」

烏野高校に入って、塾のクラスが一緒だった、月島君と山口君と出会った。2人とも私と同じクラスだった。知り合いなんて誰も居ないかな、と思ったけど案外と多いようで。話した事はないけれど、見覚えのある人たちもちらほら。ただ、それほど仲の良かった人物はいないようなので安心した。月島君も山口君も塾でしか話したことないし。それに、病気も、最近だいぶマシにはなったのだ。大丈夫、きっと隠し通せる。


「天城さん何、青城行くって言ってなかったっけ?まさか落ちたの?」
「ちょ、ツッキー!」
「うん、そうだよ」

…え?と山口君と、自分で言いだした筈の月島君が目を合わせて声を漏らした。「いやいや、冗談でしょ。塾クラスで一番成績良かったくせに何言ってんの」「天城さん白鳥沢だって行けそうだったのに」なんていう2人。山口君、流石に白鳥沢は無理だよ。と口をはさんだ。

「白鳥沢A判定貰ってたでしょ」
「…あれは丁度山が当たって…ってなんで知ってるの月島君」
「先生が自慢げに話してたけど?」
「先生…勝手に…」
「で?なんで烏野?」
「うー…」
「なんで?」


「ぐいぐい行くねツッキー。天城さん言っちゃった方が楽だよ?」なんて言う山口君。助けてくれたっていいじゃないか。「えーっと、制服が可愛かったから?」なんていうとデコピンされた痛い!


「ま、別に関係ないけど」
「1年宜しくね天城さん」
「…よろしくね!月島君山口君」





▽△▽



お昼休み、どこでお昼食べようかななんて考えていると山口君が「天城さんもしよかったら一緒に食べない?」と誘ってくれた。月島君の眉間に皺が寄ったのを私は見逃さなかった。遠慮しようかと思ったら「ぼっちじゃ可哀想だから特別に一緒に食べてあげるよ」と月島君に鼻で笑われた。

いじわる、いくない!

でもまさにその通りなので…少しだけ悩んで、2人と一緒に食べることとなった。大丈夫、月島君に弄られたくらいで私、泣かないし。沈まないし。月島君のそれは愛情の裏返しだと自分に思い込ませた。ら、「なに百面相してるの馬鹿なの?」と頭を叩かれた。理不尽だ横暴だ。でも月島君の楽しそうな表情を見て、色々自己完結した。月島君、ツンデレ。以上。


「そういえばさ、「王様」烏野らしいよ?」
「え?そうなの?」
「天城さん知らないんじゃ違うんじゃないのかな、ツッキー」
「あー…でも」
「「でも?」」
「…影山君白鳥沢行く!って行ってたけど推薦貰えてなかったみたいだし。それに…あまり…」
「頭がよろしくなかった、と」
「…ひ、平たく言ってしまえば」
「へー王様馬鹿なんだ」

い、一応烏野には入学出来てるんだからね?影山君。ただし入試試験前かなり先生が手を焼いていたのを放課後毎日目撃していたから、ごめんね影山君。馬鹿という言葉は否定できなかった。

「月島君と山口君はバレー部にはいるの?」
「うん!ねっ、ツッキー」
「まぁ…暇つぶし程度に」
「そっかぁ…私も何か入ろうかなぁ…部活」
「え、それは…」
「止めた方が良いんじゃない?運動全般出来ないでしょ。なにもないところですっ転ぶし」
「階段よく踏み外すし」
「壁に激突するし」
「もうやめて、運動神経最低なのは自覚あるから!」
「でも天城さんお菓子作るのすごく上手だったよね!何度か貰ってたし!ツッキー生クリームたっぷりのロールケーキ貰った時顔が」
「山口うるさい」
「ごめんツッキー!」
「…じゃあ家庭科部?調理部?」

ちょっとまってね。と山口君が机を探る。朝貰った部活動一覧表。山口君と私はじーっと紙を見つめる。月島君は興味がないようで。

「…ないね。どっちも」
「なかったね。残念」
「天城さん自分で立ち上げちゃえば?」
「え、いいよ。そもそも家で作るくらいが丁度いいから」
「ちなみにツッキーはショートケーキが大好きなんだ!作ってあげるとすごくよろこ」
「山口?」
「な、なんでもないよ」
「スーパー行って良いいちごがあったらショートケーキ作って持ってくるね」
「どうやって学校まで持ってくるつもりなの」


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