「あ、国見ちゃん。その後はどう?」
「お陰さまで、蟠りは無くなりましたよ」
「へぇ!よかったじゃん!で?」
「で?って言われても」
「告白は」
「直接は言ってないんですけど伝わらないものですね知ってましたけど」
「さくらちゃんに遠まわしの告白は絶対に通じないでしょ」
「抱きしめても伝わらないんですよ。あいつ鈍感過ぎ」

え、国見ちゃん割と奥手っぽいのに普通に抱きしめたりしちゃうんだ、いがーい!なんて笑う及川さんに岩泉さんが拳を振りおろしていた。そんな状況を横目に俺は携帯を見る。何件かメール受信がある中でさくらの名前を見つけた。

<月島君と山口君にお話ししたよ。月島君は私に似合いすぎて気持ち悪いっていってました。いつも脳内花畑って。ひどいよね>

思わず笑ってしまった。<まったく持ってその通りだと思うけど>とメールを返す。顔を上げると及川さんが俺を凝視していた。

「な、なんですか」
「いやー、良い顔で笑うようになったなぁって。今日の部活も良い感じだったし」
「良い感じにサボってたよな。溝口コーチに何回怒鳴られてたよ国見」
「そこは察してよ岩ちゃん」

全部俺のお陰だからね国見ちゃん!さぁ先輩を敬え!とドヤ顔する及川さんに「調子に乗るなよ」とまた岩泉さんは拳を振りおろした。ついでに俺も殴っておいた。そして「お先失礼しまーす。お疲れさまでしたー」と俺は部室を出た。及川さんの叫び声が聞こえたのは多分気のせいだ。





「もしもし?」
『国見君部活だったんだよね?お疲れ様!』
「うん。さくらの方は大丈夫」
『大丈夫だよ。2人とも、すごく優しいから』
「……そう」

さくらは友達として見ているし、あの2人だってさくらを友達として見てるのは知っている。俺の心情にも気づいてるわけだし。でも、なんかむかつく。携帯を握りしめる。『国見君?』無言を不審に思ったのだろうか、さくらが声を掛ける。ほんと、こいつに振り回されてばっかりでむかつく。はぁ、と溜息を吐き空を見上げる。もう星が出ていた。

「ねぇさくら」
『なぁに国見君』
「俺はさくらが好きだよ」
『私も国見君がだいすきだよ』

…ほんとこいつむかつく…。さっきよりも大きく、わざとらしく溜息を吐く。わかってたよ、まったく。脳内お花畑本気でなめてた。

『国見君?私何か間違えた…?』
「別に。ただ思った以上にお花畑だなって思っただけ」
『…もしかして私の事?』
「もしかしなくてもお前の事だよ」
『なんでみんなそう言うかなぁ…』

自覚ないって本当におそろしい。




▽△▽


切れた携帯の画面を眺める。普通に、会話できるようになったなぁ。普通の事なのに、それがとても嬉しい。明日も明後日も、国見君とお話しできる。学校が違うから、そう毎日会えないけど、電話なら毎日出来るもんね。怒られちゃうかな?


――俺はさくらが好きだよ


私だって、国見君の事が大好きだよ。どうせ伝わってないんだろうけど。国見君と同じ気持ちの好きだもん。ずっとずっと、だいすきなんだもん。

「…うわぁ…」

気が付くと、部屋が花で埋め尽くされていた。片づけるの大変だぁ。最早花の海となった部屋で寝転がる。視界が花しかない。全身が花に覆い尽くされる。このまま、花の海で溺れちゃえばいいのに。そう思うほどに、今の私は幸せだ。


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