「ちょっと、話をしようかさくら」

なんで、国見君が烏野に居るんだろう。当然のように、私を待ち構えていた国見君に私の手は捕られた。足は動くが、身体が石のように硬い。これから起る事を予期してか。私はどうせ、国見君に嫌われてしまうだろう。
国見君に手を引かれ、着いた先は小さな公園だった。夕暮れ時で、子供はだれ一人いなかった。「この公園じゃないけどさ、よく二人でブランコ乗ったよね」今となっては低すぎるブランコに国見君が座った。私も、隣のブランコに座る。

「久しぶりだねさくら」
「ひさしぶり、だね。国見君」
「今更だと思うけど、色々言いたい事があるんだよね」

じっと、私を見つめる国見君にたじろいた。怒られるかな。もう逃げてしまいたい。きっと国見君はそれを赦してはくれないだろうけど。

「怒らないよ、今更過ぎる。今更行動する俺が嫌になるよ。で、なんで俺から離れてったの?」

私は答えない。

「なんで烏野に行ったの。俺と一緒に青城に行くって言ったじゃん」

私は、答える事が出来ない。

「俺がさくらに何かした?」
「ち、違うよ、違う全然違う」
「じゃあ病気のせい?」

え…?と声が漏れた。なんで、国見君がその事を、知ってるの?

「ごめん、及川さんとさくらの事で探りいれてて、さくらが通ってる病院に行った」
「先生、話したの?」
「病気の事については一切。どんな病気かはしらないけどそれが俺から離れて行った原因っていうのは教えてもらった」

先生は、おしゃべりだ。言わないって、国見君にだけは言わないって私は誓ったのに。なんで先生言っちゃうの。

「ねぇ、教えてよ」
「やだ」
「なんで?」
「気持ち悪いもん、絶対やだ。嫌われちゃうもん」
「俺がさ、今までお前の事嫌ったことある?喧嘩だってまともにしたこと無いしさ」
「自分が気持ち悪いって思ってるこれを、国見君に言うのはやだ。誰にも言いたくない」
「月島にも山口にも?」
「…なんで、知ってるの」
「2人に言われたんだ。さくらが元気ないから何とかしろって」

2人とも、私の事心配してくれたんだ。でも、私は。

「なぁ、俺が嫌わないって言ってるんだから信じろよ。俺がお前に嘘吐いた事今まで合った?」

無いよ、今の今まで一度も国見君は私に嘘を吐いたことはなかった。いつも優しくて、でもちょっと意地悪で。大切な幼馴染で。ぽたぽたと涙が落ちる。ああ、もう駄目だ。堰き止められない。

「…さくら?」

青い花が舞う。
面白いなぁ。涙まで、花になっちゃった。小さな花が目元から零れ落ちる。

「気持ち悪いもん。こんなの。なぁに、これ。涙まで花になって」
「――あの時の花って」
「そうだよ、私だよ。部屋中花でいっぱいにしちゃって。私が。こんな意味がわからない病気で」

脚が、花に埋もれる。情緒不安定がそのまま花の量になる。このままだと、公園中花の山になるかもしれないあぁ、なんて頭の隅で考えた。

「ねぇ、それだけ?」
「え」
「それだけ?お前が気持ち悪いって思ってた病気は。なんだ、大したことないじゃん。腕が蛇になるとか、そんなのだったら流石に引くけど」
「なにそれこわい」
「花って…お前、花って」

こんなにも私は真剣なのに、なんで国見君はそんなに愉快に笑うんだろうか。

「ぴったりじゃん、お前に花」
「な、に」
「身体、何ともないの?この花潰したら息苦しくなったりとかさ」
「何も、ないよ。花があっちこっちから湧き出るだけ。感情に合わせて青い花がでたり、ピンク色の花が出たり」
「じゃあいいじゃん」
「な、なにが良いの…!?だってこんなの」
「さくらにぴったりだよ。随分と悩んでたお前に失礼だけどさ。随分可愛い病気じゃん。なんだ、悩んでた俺ら本当に馬鹿じゃん」
「国見君が軽いだけだよ…!いや、先輩も軽かったけど…」

先輩…?なんて疑問の目を向けられるが、今は置いておく。みんな軽過ぎだよ。身体から花だよ?気味悪いじゃん。

「あーあ」

さくらのばーか。そう言って国見君は私を抱きしめた。国見君、あったかいなぁ。なんて。ぼろぼろと花が零れ落ちた。

「出てる花が青から薄ピンクに変わったけどなに?これ何か意味あるの?嬉しいとか恥ずかしいとか」
「国見君黙ってください」
「図星か、わかりやすい」

ほんと、なんだよ。馬鹿みたいじゃん俺ら。私を抱きしめながら、国見君はぼやく。

「お前さ、能天気馬鹿なんだから、下手に考えるなよ。いつもみたいに頭ん中花畑にしてさ、今のこんな風景みたいに」
「う、うるさいよ国見君!」
「気持ち悪いなんて言ったやつが居たらさ、俺がぶん殴ってやるからもう無理するのやめなよ。馬鹿さくら」

私の顔を覗きこむ。国見君の大きい手が、私の頬に触れた。

「そんな事じゃ。俺はさくらを嫌わないよ。きっと月島も山口もさ。結構さ、世の中馬鹿ばっかりなんだから。そんな身体から花が咲くなんて些細な事気にしないよ」
「さ、些細…」

些細なこと…なのかな、これ。「お前明日この事月島と山口に言いなよ。どうせ嫌われやしないんだから」なんて根拠のない事を国見君が言う。でも、国見君が言うなら大丈夫な気がして、私はこくんと頷いてしまった。



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ご都合主義ですがみんな優しいのです。


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