あの馬鹿は結局、烏野に合格したらしい。馬鹿のくせに白鳥沢を一般で受け、青城も受けたらしい。結果は…聞くまでもない。俺達は全員青城に無事合格。本当に影山とは離れ離れになるんだな。やっぱり、寂しい気持ちになった。

「卒業だね」
「だねー。飛雄と金田一君バレー部員に連れてかれてたけど国見君は良いの?」
「いいよ、別に」

あっちで泣きわめいてるの聞こえるし、出来れば近づきたくない。余計な事しか起こらないよあれ。飛雄もすっかり溶け込んだね、という言葉に頷いた。

「ありがとう」
「…なにが?」
「飛雄のこと。国見君が何かしてくれたんでしょう?」
「別に。俺が高槻の事好きだから、依存するのやめてくれ、って言っただけだよ」
「そっか……?うん?」
「俺が高槻のこと」
「ちょ、ちょっと待って!」

慌てる高槻の手を奪い握る。真っ赤な顔をして視線を泳がせる高槻。

「好きなんだけど」
「え、えーっと…あの」
「まだ、影山と付き合ってる?」
「それは…多分自然消滅だけど。飛雄私の事好きじゃないの知ってるし」
「うん。じゃあ問題ないよね?」
「ええええええ?」

ちょっと、いい加減落ちてよ。割と我慢してたんだから。高槻を抱きしめる。あ、う。と言葉にならない声を零し、腕が背中に回るのがわかった。

「私、国見君の事恋愛感情で好きなのか、分からないんだけど…」
「いいよ今は。高校入学したら覚悟しておいてもらえれば」
「…何をする気なんでしょうか?」
「えー、俺の事しか見えないようにするだけだよ」
「…とんでもない自信だね…」
「当然」

高槻の身体を少し離す。「今はこれで我慢するよ」とおでこにキスをした。

「ちょっと…手が早くないですか…心が追いつかないんだけど」
「こっちは3年片思いでした」
「えっ」
「いやー片思い歴長いね俺。これから覚悟しててよ藤乃」
「お、お手柔らかに」







▽△▽

秘密の話をしましょう。
きっと、一生言わない私の秘密。私は大嘘吐きなのです。
私は飛雄が好きでした。昔から、ずっとずっと好きだったのです。私の気持ちを知っている人が居れば、恋人ごっこをしている私を見てさぞ滑稽に思ったでしょう。私は、バレー部の為でも飛雄の為でもなく自分の為に飛雄と一緒に居たんです。私は大馬鹿者です。飛雄の感情も、国見君が私に対して想っている事も、全部見て見ぬふりをする大馬鹿者です。

なにも出来ぬまま、時が流れます。なにも変わりません、バレー部と飛雄の関係も、私と飛雄の関係も。時が止まったままでした。終わりまで、そうだと思ったのです。でも、唐突に終わりは来ました。いや、きっとそれは始まりだったのでしょう。
少し不安そうに、でも楽しそうにバレーをする飛雄を本当に久しぶりに見ました。試合に勝って、国見君と金田一君と笑い合う姿を見て、するり、と何かが抜け落ちる感覚がしました。

――もう、なにもかも大丈夫だね。
涙をぐっと堪えました。恋人ごっこのおしまいだよ。

辛いと思っていた終わりも、案外良いものでした。あれ以来、飛雄と2人で居る事が少なくなり、国見君と金田一君の4人で居る事が多くなりました。すごく、楽しいのです。馬鹿みたいに楽しいのです。きらきらの毎日です。あ、飛雄に勉強を教えるせいですこしやつれはしましたが。卒業まであと少し、この4人で居られるのもあと少し。寂しく思いました。でも、辛くはありません。

「好きなんだけど」

国見君に言われた時、心臓が止まるかと思いました。知っては、いたはずなのに。自分が自分じゃないみたいに身体が熱くなりました。どういうことなんでしょうか。私は、飛雄が好きで…?じっと私の瞳を射抜く国見君には、私自信が理解できない気持ちを見抜かれているような、そんな感覚に陥ります。

「私、国見君の事恋愛感情で好きなのか、分からないんだけど…」

やっぱり私は大嘘吐きです。はじめて呼ばれた下の名前に、私は妙な浮遊感を覚えるのでした。


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