あれ以来、飛雄はバレー部に戻った。毎日放課後、金田一君と何かと口論しながら体育館へ走る飛雄を目撃する。その姿は、やっぱり楽しそうだった。

「ところで国見君は本当に部活に行かなくていいの?」
「…一年分の体力をこの前使ったから暫くいいや。あいつ等暑苦しくて疲れるし」
「そ、そっか…」

机に突っ伏す国見君を見て苦笑。確かに、あの時の国見君は今までに見たことのない覇気のある…流石に失礼か。でも、生き生きとしていた。「いつもあんな感じでいればいいのに」というと「単細胞みたいじゃん、やだよ金田一じゃあるまいし」金田一君…国見君の中の金田一君の評価が…。


「そういえばさ、金田一が一緒に青城行こうって影山を説得してるんだけど」
「…とんでもなく失礼なことを言うと、飛雄の頭じゃ今から勉強しても青城は…多分烏野でぎりぎりだよ…部活ない日は私がスパルタ勉強会してるもん…」
「だから最近やつれてるんだ?」
「え、うそ」
「目の下のクマ。わかってたけど影山馬鹿なんだね」
「…否定できない」
「あいつからバレー取ったらただの馬鹿か」

まぁ、金田一の気持ちは分からなくもないけどさ。ようやく、影山と打ち解けられたのにもう一緒に試合に出られなんだからさ。あ、俺影山やっぱり嫌いだからどうでもいいんだけど。なんていう国見君に苦笑した。

「国見君1年の頃は飛雄と仲良かったじゃない」
「あの時はまだ素直影山だったからね。今のあいつむかつく」

そう言いながら笑う国見君に、私は嬉しくなる。なに、笑ってるのさ。とデコピンされた。酷い。おでこを押さえていると、国見君は思い出したかのように声をあげる。

「そういえば」
「あー!お前いい加減折れろよ!国見、高槻からも言ってやってくれよ!」

国見君の声を遮って、金田一君が教室に入ってきた。腕には首を絞めつけられている飛雄。若干顔色悪そうだけど、大丈夫?お構いなしに金田一君は飛雄をぶん投げる。

「俺は、高校でも影山と国見とチームメイトとしてバレーがしたい!」
「…青城には及川さんがいるだろ…」
「あー!だからなんでわかんねーんだよ!!及川さんもスゲーけど、俺らは影山がいいんだって!!」

どちらも譲らない。金田一君、ごめんね。実は飛雄に「俺、青城行けるか…?」って聞かれたとき、「絶対無理」って言っちゃったんだ。ごめんね。でも辛い現実を教えるのも大切だよ…?ははは、と覇気の無い笑いが漏れる。国見君がため息を吐いた。

「影山馬鹿だから青城無理だって馬鹿だから」
「推薦きてるんだろーが!」

え、と国見君と声が重なる。渋い顔の飛雄。

「そんなもん、とっくの昔に蹴った」
「んの馬鹿!!」

馬鹿馬鹿うるせーよ…と項垂れる。「金田一、いい加減諦めなよ」と国見君が声を掛け、あーちくしょー…と声をあげた。

「影山だけ違う学校かよ…」
「…ちょ、町内会バレー的なあれじゃ…だめ、か?」
「なんか違うだろ」
「確かに、3人が一緒にプレーするところ、見れなくなるのは残念だよね」
「高槻もこう言ってるぞ」
「じゃあ青城合格でき」
「ごめん無理だよそれは」

ほらみろ、とやっぱり無理だ。高槻がきっぱり無理って言うんなら本当に無理なんだろうな。と結論に至った。ごめん、本当にごめん。

「影山が馬鹿なのが悪い。金田一ですら合格判定もらってるのに」
「どういう意味だ国見阿呆」
「馬鹿金田一」
「馬鹿は俺だ」
「なんでお前自分で言い切るんだよ。馬鹿だけど影山馬鹿だけど」


もう昔からの親友みたいだよこの人たち。ちょっと前までのギスギスした関係が嘘のよう。残念だなぁ本当に。3人が、一緒にプレーできないなんて。

「…高槻、どうしたの?」
「えっ。あ、ちょっとぼーとしてただけ…うん、寂しいなって思っただけだよ」
「…そう、だな。受験終わったら…卒業だもんな」
「こうやって、会えなくなっちゃうね」
「影山だけね」
「影山だけな」
「…るせーよ…馬鹿で悪かったな…」
「俺ら全員馬鹿だったな」

もっと早く、和解出来ていたら、もっともっと仲良くなってたね。今更だけれど。「今が楽しいんだからいいんじゃない?」という国見君の言葉に、みんなが頷いた。


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