他のバレー部メンバーとはあまり関わった事はなかったけど、金田一君と国見君とはよく話をした。特に国見君とは3年間同じクラスだったので話しやすい部類の友人にカテゴライズされていた。
3人で集まって話をする時は殆ど決まって飛雄に対する愚痴だったりする。たまに「あ、高槻は飛雄の幼馴染だったな…」と気まずい顔をされるけど、私は特に気にしてなかった。飛雄に問題がある訳だし。なにも言わず、相槌を打って話を聞く姿を「聞き上手」と認識したらしい金田一君は影山に対する愚痴を言いまくりだった。苦ではないが、ちょっと疲れる。途中で居眠りを始める国見君にずるい、と思いつつも最後まで金田一君の愚痴を聞き届けるのだ。

「もうすぐこんな日常も終わりなのか…。そういえば高槻ってどこの高校行くんだ?」

今日も今日で飛雄の愚痴を吐きだしきった金田一君。部活無いのによくもまぁそこまで飛雄の愚痴が言えるなぁ…と逆に感心した。で、高校の話ね。

「私は青城だよ」
「へー…高槻はいいんだけど…つーことは影山も?」

飛雄ね、烏野に行くって言ってたの。そう言うと寝ていた国見君は静かに起き上がった。と金田一君は「そっか」と安心した表情をした。なんともやるせない気持ちになるが仕方のないことだ。

「ということは、金田一君も青城なんだ?」
「おう、国見もだぞ」
「へ―…」

ゆらゆらと、半分寝ている国見君に目を向ける。…本当に寝てたんだ。なんて思っているとぼそり、国見君が呟く。

「彼氏と学校離れちゃっていいの」
「…ん!?は、国見今なんつった?」
「高槻の、彼氏?影山」
「は…?」

金田一君は石のように固まった。国見君もっと前に金田一君に話していると思ってた。ぎりっと金田一君は拳を握りしめる。

「試合前のあれか。あいつが余計な事を…」
「…仕方ないんじゃない?」
「仕方ないですませるもんじゃねーだろ!」

私を置いて、2人が口論し始めた。どうしよう、止めるべきなんだろうけど、どうすればいいのか。「ちょっと…」と口を出すと「お前はちょっと黙ってろ、影山引きずってくる」と立ち上がるもんだから必死に止めた。途中まで攻防を続けたが、金田一君が諦めてくれた。2人してまた椅子に座る。


「あれはアイツのただの八つ当たりだったんだ、あの後アイツも反省してたし。だから高槻が如何こうする理由は無いだろ。そもそも俺らはもう引退して、あんなギスギスした雰囲気はもう」
「でもどうせまた起っちゃうよ。違う学校であっても、それは止めなきゃ。だから」
「…高槻が、やる必要ないだろ」
「幼馴染だもん、なんとかしてあげなきゃ」
「おい、国見からも何か」
「いや、高槻に何言ってももう聞かないと思うよ?」
「お前は!それでいいのか!?」
「仕方ないよ、どいつもこいつも馬鹿なんだから」

そんな国見君の台詞に笑ってしまった。そう、馬鹿ばっかりなんだよね。複雑そうに私を見つめる金田一君に「大丈夫だよ、卒業までには良い方向へ行くように頑張るから」なんていうと溜息を吐かれた。

「俺らのせいでもあるんだ、だから手伝う」

本当に私は良い友人を持ったなぁ。




▽△▽


あーねむい。とぼとぼと廊下を歩いていると後ろから金田一に怒鳴られた。五月蠅いな全く。そのまま無視して進むと後ろから頭を叩かれた。何するんだ全く…。追いついた金田一は俺の横へ、歩幅を合わせて歩き出した。

「お前なぁ!高槻と影山が付き合った事教えろよ!」
「なんで」
「なんでじゃねーよ!ていうか突っ込みどころ満載だろ!つーかお前はいいのかよ!!」

高槻の事好きなんだろ!という言葉に動かしていた足をとめた。ふーん。

「金田一って、そういうの鈍感そうで割と気づいてるんだ」
「俺の感心してんじゃねーよ!あと微妙に貶すな!」

あーはいはい、また歩みを進める。ぐちぐちぐちぐち、金田一の小言が始まる。いつも思うけど、これずっと聞いてる高槻本当にすごいな…俺30秒で寝る自信がある。そんな事を考えてたら「聞けよ!」とまた頭を殴られた。

「ぎゃんぎゃん五月蠅い殴るな」
「だってよォ…」


あの二人の関係は曖昧で複雑で、でもとても単純だ。あそこにあるのは、ただの罪悪感だ。そんな2人の今の関係に嫉妬なんか起こさないし、そもそも俺達にあの2人の今の関係をとやかく言う資格はないだろ。そういうと金田一は口を噤んだ。

「別に俺は良いよ。同じ高校行くって言うんだから。高校でどうにかする自信はあるし」
「お、おう」
「まぁ今の状態を善しとは思ってないけど。結局高槻に任せるしかないんだよ、今は」

影山がいなければ、こんなことにはならなかったのに。頭に浮かんでしまった言葉を必死に消した。駄目だ、俺思ったより影山の事が嫌いらしい。嫉妬しないんじゃなかったのかよ馬鹿。



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