「先輩先輩せんぱーい!」

大量の資料を手に走ってくる委員会の後輩ちゃん。おーい、転ぶなよー!と言うと「寝起きの先輩じゃないんで大丈夫です!」とか言いやがりました。どういうことだ。

「そんなことより先輩!バレー部!バレー部見に行きましょう!!他校と練習試合みたいなんです!」
「へぇー…練習試合ねぇ…で、仕事は?」
「粗方終わりました!及川先輩に会いに行くのも仕事の一つです!」

語尾にハートが付く勢いだった。後輩ちゃん及川ファンだったっけ?と首をかしげた。暫くして思い出す。ああ、なるほどね。

「いいよ、いってらっしゃい」
「え、先輩も行くんですよ?」
「なんで」
「国見くんが喜びそう」
「えぇー…?それはどうだろう」
「いいから!行きますよ!!」

ええええ?形振り構わず私を引きずる後輩ちゃん。ていうか力強いなこの子。仕方なく後輩ちゃんに連れられ体育館へ。既に試合は始まっているようだ。…あれ、あのジャージは。



「烏野と練習試合だったんだ」

ていうか及川居ないじゃん。及川ファンがお通夜状態だよ。「ちっ、及川先輩居ないじゃねーですか…あと1枚なのに…」と後輩ちゃん。あれの提出期限ってだいぶ前だったよね。ふむ、及川じゃなくて岩泉に聞いた方がいいんじゃないかな。でもまぁ、ちょっと見ていこ「おい今のカバー入れたろが国見のボゲェー!!」…国見…

「先輩、国見君応援してあげてくださいよ!きっとスイッチ入りますよ!」
「いや、国見は多分...」


2セット目までは本気出さないと思うけどな。と言おうとして止まった。烏野の小さい子が、とんでもない剛速球。え、なに?何が起こった?後輩ちゃんも「え、今のめっちゃすごくないですか?」なんて言っている。素人目から見てもトンデモ技だということがわかる。呆気に取られていたら青城が2セット目を取られていた。3セット目が開始される、と突然黄色い声が上がる。ああ、及川さん降臨ですかそうですか。監督と喋っている姿が見えた。ちらり、及川と視線が合う。すると一瞬吃驚した表情、から満面の笑みになった。

「蒼ちゃーん!!」

私の顔が引き攣るのがわかった。体育館に居るほぼ全員の視線が私へと向けられる。「あ、生徒会長だ」「生徒会長も及川さんを…?」なんてこそこそ言われる。やだなぁ、変な噂立てないでよ。あ、スガと目が合った。流石に今の状況で手は振れない。
本当にあの人面倒だな、と隣の後輩ちゃんが舌打ちをする。私はすぅ、と息を吸う。

「おいかわァー!」
「はーい!なになに蒼ちゃん応援に来てく」
「今年の部活申請書類、出てないのバレー部だけよ!!」

青城バレー部全員が固まる。コーチ、監督、岩泉辺りは怒りに震えるのが分かった。数秒後、はははは、と空笑いする及川。

「ち、ちなみにそれの提出期限って…いつだっけー?」
「先々週」

…え、マジで…顔が青くなる及川に後輩ちゃんが更に追い打ち。

「及川せんぱーい!早く書類提出しないとバレー部休部になっちゃいますよぅ!!早く出してくださいねえ―!!こっちとら1つでも出てないと他全部提出できねーんですから手ェ煩わせるんじゃねーですよクソが」

最後の方はほぼ小声で言った。この子怖い。周りに居た生徒は「副会長怖ぇ…」と若干引いていた。さて、用事も終わったし、生徒会室戻ろうかというと「はぁい!」と後輩ちゃんは元気よく挨拶をした。目が合ったスガに小さく手を振りその場を後にする。体育館を出る時、怒りに震えていた3人の怒鳴り声が聞こえた気がした。

「まぁ流石に青城が誇る強豪バレー部を休部にはしないですけどねぇー。これくらいの脅しくらいいいでしょう!及川先輩ざまぁ」
「及川個人じゃなくてバレー部全体に知らせるように言う辺り、水石ちゃんもいい性格してるよね」
「えー、言ってくれたのは先輩じゃないですか!」
「これくらいいいでしょ」
「先輩いい性格してるぅ!」


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