朝が嫌いな私はなんとか6時くらいに起きる。…起きると言ってもここから10分以上はぼーっとタイムが始まる。ゆっくりとした動作で洗面所に向かい顔を洗う、ぼさぼさの頭。ぽけっとした目。駄目だ、早く起きなければ。そう思いながらも夢現に部屋に戻り髪を梳かして、ここら辺で漸く目が覚める。さて、制服に着替えて家を出よう。時刻は7時ちょっと前。この時間、家の前を丁度幼馴染が通るのだ。

「おはよう蒼」
「おはようスガ。毎朝頑張るね」

朝早いのは大変だけど、やっぱりボール触ってるの楽しいし。あ、そう言えば凄い1年が入って来たんだ。幼馴染でご近所さんの菅原孝支と5分ほど会話をする。毎朝の日課だ。「じゃあね」と手を振り別れた。
ここら辺で大体電車の時間が危うくなる。スクールバッグをしっかりと持ち、私は駅まで走る。徒歩15分の道のりを、なんとか5分短くする。猛ダッシュをしたり、裏道を使ったり、道ではない道を進んだりあの手この手で駅へ向かう。…見つかったら若干怒られる気がする…。

さてさて、結果的に電車には間に合った。毎朝毎朝とんでもなく体力を消費する。最寄駅ですら微妙に遠いんだもんなぁ…自転車でも買ってしまおうか。
家から最寄駅まで徒歩15分、死ぬ気で走って10分以内、体育会系ではない私にはこれが限界だ。さらに電車に揺られて20分。私が毎朝通学する道のりだ。あー…やっぱり近くの烏野受ければよかった。なんて思いながら丸2年間通った。今年が、最後かぁ…。なんとなく、寂しい気持ちになる。まだ春だけれども。

私が乗る駅から乗車する人はあまりいない。がらんとした電車でゆったりと座る。20分、寝ちゃおうかな…多分、いつものようにあの子が起こしてくれるだろうし。そう思い、目を閉じた。




「…ん…い……間宮、先輩」
「んー…?」
「おはようございます先輩。次、降りますよ」
「んー」
「取りあえず起きてください先輩」
「んー…」

ふわふわな意識の中、電車を降りる。

「んあー…国見おはよう…ありがと、起こして…くれ、て」
「いや、全然起きてないでしょう先輩。目を開けてください目を」

あー…と目を開けるとめんどくさそうな顔をする後輩がいた。「ほら、シャキッとしてください先輩の威厳がないですよ」なんて言う。もとより、私に先輩の威厳は無いと思うし必要ないよ国見。

「俺朝練遅刻ぎりぎりなんで、早くいきますよ」
「なぜ私も急がねばいけないの…」
「あんたほっといたら壁に激突してるからでしょうが。目が離せないです」
「……おきます」
「はい、起きてください」

毎朝毎朝、1つ前の駅から乗ってくる国見に起こされる。超高性能目覚まし時計だ。面倒だと言いつつ毎朝バレー部の朝練に行くのだから結局バレーが好きなのだろう。…まぁほかの部員より遅く出てきているらしいのだけれど。


「なんで間宮先輩はこんな朝早くに来てるんですか?普通に登校するだけならもう1本後でも大丈夫でしょう?」
「んんー?委員会の仕事とか、委員会の仕事とか…あと委員会の仕事とか…かなぁ…」
「全部委員会の仕事じゃないですか。ほかの奴らに少しくらいやらせればいいんじゃないですか?毎朝毎朝…」
「私が一番暇人だからね、別に私一人だけってわけじゃないよ。ただ必然的に私の仕事量が多いだけで。心配なら、私のこと手伝っちゃってくれたっていいのよ?」


まぁ国見にはきっつい仕事だろうけどねー、只管単調に事務作業をやるって。こればっかりは向き不向きがある。私は割と得意な方だ、只管机に向かっての作業は。

「…塩キャラメル献上するなら手伝ってやらなくもない…です」
「いやいや、部活忙しいでしょ。しかも国見が嫌いそうな資料まとめの仕事」
「……ホチキス留めとか」

可愛い奴め。


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