すこし、おっかなびっくりです。




あ、間違えた。なんて気付いた時にはそのメールは送信されてしまった。うーん、どうしよう…間違って顔文字出てきちゃったから消そうとしたら送信ボタン押しちゃった。…まぁ、いいか。
さて、本来打とうとしていた文字を打つか。なんて思っていたら松本さんから電話が入り、そのまま暫くお喋り。美味しいカフェの話とか洋服の話とか…流石都会人、なんでも知ってる都会人。今度お買い物行こうね、なんて約束までしてしまった。カフェって甘いものと珈琲が主だよね…私生きて帰ってこれるかな。
んー!と伸びをする。…なにか、忘れているような…。ここで徹へのメールを思い出した。今の時間、徹部活終わったくらいかな。さっきのメール間違いだって送らなきゃ。


『ごめん徹、間違えた』

取り敢えず先にこれだけ送っておく。私文字打つの遅いし、送ろうとしたメール作るのにきっと10分かかる。ぽちぽちと文字を打ち始めると、ピロリン、着信音が鳴った。徹からだった。…少し悩んで、メールを開く。


『。・゚・(ノД`)・゚・。』


…なんだろこれ。どうすればいいんだろう…。なんで泣いてるんだろう、送信相手間違えてる?あり得るかもしれない…。取り敢えず、徹のメールは置いといて、自分が送ろうとしているメールに集中…しようと思って間違えて全消ししてしまった。うん、これはよろしくない。


「黒尾先輩ヘルプです、私の代わりに文字打って徹に送ってください。黒尾先輩の携帯からでいいんで」
『あかりちゃん、吃驚する事を教えてあげよう』
「なんですか」
『スマホって電話出来るんだぜ?』
「ばかにしてるんですか」
『もうひとつ助言をしてやろう。電話は遠くの人間とも会話が出来る』
「馬鹿なんですか黒尾先輩」
『…凄く傷つくんだけど…うん。なぁあかりちゃん、電話は嫌いか?』
「普通ですけど、今だって黒尾先輩と電話してるじゃないですか』
『じゃあ徹ともメールじゃなくて電話で良くない?』

ピッ、と思わず通話終了ボタンを押してしまった。…目から鱗です。黒尾先輩なに当然の事言ってるんだろうと思ったらこれですか。成る程…なんだ、私が馬鹿だったんじゃないか。
さて、アドレス帳から徹の名前を見つけ、タップしようとした矢先黒尾先輩から電話来た。邪魔しないでくださいよ。なんて思いながら電話に出る。


「なんですか」
『いきなり切らなくてもいいんじゃないかと思ってな!』
「うっさいです」
『目から鱗、とか思っただろ?』
「バレー部ラインに「黒尾先輩にいじめられた」って書きますからね」
『やめて、袋叩きにされるからやめて。つーか徹に電話って…まさか…』
「なんですか」
『あかりちゃん、その事実は永遠封印って約束しただろ』
「いやしてないですし。それに電話では言いませんよ。お父さんとお母さんも一緒に話そうと思ってますし」
『駄目!そのまま「娘さんを俺にください、必ず幸せにします」って流れになっちゃうからァ!』
「黒尾先輩五月蠅いんで切りますね」

迷うことなく通話終了ボタンを押す。即ラインを開き音駒バレー部グループに「黒尾先輩にいじめられました。敵討ち求む」とだけ打って画面を戻した。一向に進まないじゃないか…。

さて、今度こそ電話をするぞ。と私はアドレス帳の徹の名前をタップした。


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