一歩手前、みんなに引き留められます。




「え、何この空気」

おいリエーフ声出すんじゃねぇ!と小声で聞こえた。私はじぃっと、黒尾先輩を見る。「えーっとぉ…」なんて言葉を漏らし、暫くして私の目線に堪えられなくなったのか、黒尾先輩はそっと目を逸らした。


「やっぱり」
「研磨さん?」
「思った通り」

実際会ってみても、なんかすごい違和感だったし、そもそもあかりがお兄さんの話する時ってなんか一線引くような感じだったし。研磨さんには色々見破られているようだ。

「そもそも、私と徹って全く似てませんし」
「まぁ、確かに似てないなとは思ったけど。特に中身が…というか、え?なに、え?」

夜久先輩が目を見開く。つまり、えっと…え?何故か狼狽える。もう、答えを言っているようなものなのになんでだろうか。


「私と徹、血は繋がってませんよ」

及川家の誰とも、血は繋がってないです。
…数秒の間、そして絶叫。声を上げる部員、特に黒尾先輩と夜久先輩の声が大きくて思わず研磨さんも一緒に耳を塞いだ。


「いや、確かに似てねーけど!え、そもそも兄妹じゃないの!?」
「そう言ってるじゃないですか」
「いやいやいやいや」

ガシッと肩を掴まれる。ガクガクと身体を揺らされる。止めてください黒尾先輩、酔ってしまいます。

「なに、徹はそのこと知ってるの」
「知らないですよ。大切な話だから、仲直りしたからこの話をしに行こうかと」
「ヤメテまじそれ駄目、駄目なやつ」

なんですかそれ、駄目なやつって。酷く狼狽える黒尾先輩の顔が怖い。なんでこんな反応されるのだろうか。疑問に思いつつ誰かに助けを求めようと周りに目線を向けると、全員が全員、これまた微妙な顔をしていた…リエーフ君を除き。


「どーしたですか、みんなして」

リエーフ君が声を上げる。全く持ってその通りだ。そんな妙な顔されても困ってしまう。みんな何やら目を泳がせているし。なにか、この事実に問題があるのだろうか。そりゃあ兄妹として育てられていたのに、実は血の繋がっていない赤の他人で…複雑ではあるだろうけど、それでも私は、及川家の家族の一員で、徹の妹で。そう、思ってはいけないのだろうか。


「あの拗らせシスコン及川が大好きな妹と血が繋がって無いなんて聞いたら、『じゃああかりと結婚する』とか言いかねないからな!」
「…は?」
「あかりちゃん徹の本性知らないだけでほんとあいつの性格ヤバいからな!その事実封印!!」
「いや、意味わからないですし」

もう、来週の土日で宮城帰る気満々ですし。そういうと「駄目ほんと駄目!」と黒尾先輩がとんでもない形相で懇願してきた。結婚するとか、意味わかんないですし。徹シスコンとか、絶対無い。夜久先輩、助けてください。と目で助けを求めたが、夜久先輩の表情もやはり曇っていて。

「あー…俺もさ、あんまり言わない方が良いかなぁ…なんて」
「夜久先輩まで何を言いますか」

いったい遠征中、この人たちと徹の間で何があったのだろうか。


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