居残りも、楽じゃない。
「今頃、先輩達試合中かな…」
「…時間的に終わって片づけぐらいじゃない?」
「……俺も行きたかった」
「バスケ、楽しかったでしょ?」
そりゃあ楽しかったけど!楽しかったけど!!とリエーフ君が地団駄を踏む。そりゃあもう楽しそうにボール追いかけてたからね。バスケ部2年の先輩方にすごく勧誘されてたからね。「えーどうしよっかなぁ?」なんて本気で悩むリエーフ君を説得するのに労力使った。
「ほらリエーフ君、ご飯食べに」
「おーい!リエーフーおいかわー!」
声を掛けられ、後ろを振り向くと二枝君が手を振っていた。隣には東月君。「なー?一緒に飯食わねー?」という二枝君の言葉に私とリエーフ君は顔を見合わせた。
「ちょうど」
「行こうと思ってた!」
「そう、それはよかった」
「…ハッ!ちょっと待て…お前ら2人で行こうとしてたって事は…放課後デー」
「おっとまた手が滑って二枝に蹴りを入れてしまった」
「!?」
とても良い見事な棒読み。しかもそれ…手が滑ったじゃなくて…。がくんと倒れ込む二枝君を見下ろし「あ、こいつの発言は全てにおいてシカトしていいから」と東月君が言い放った。痛みに悶える二枝君に「…だ、大丈夫?」と声を掛けると「及川、地面に話しかけて何してんの?」と超笑顔で東月君が答えた。うん、ごめんね二枝君。今だけは存在を抹消させて頂く。東月君は逆らっちゃいけない人だ。
「どこ行こうか、マック?」
「いつも先輩達と行ってるファミレスは?色々あるし…稲荷寿司は無かったけど」
「地獄坦々とか有る」
「いいね、二枝に食わせよう」
あ、二枝死んだ。とリエーフ君が笑った。…死ぬほど辛くは無いけど。「俺、辛いの食えないの知ってんだろーお前らー」とよろよろ立ち上がる二枝君。あ、死んだこれは死んだ。「ぜってー食わないからな!」それはフラグというんじゃないだろうか。そんな事を思いながら私たちは歩きだした。
<東月の話>
さて、馬鹿とリエーフと及川とでファミレスに来たわけなんだけど、来た事が無いファミレスだった。どうやらバレー部御用達のファミレスらしい。中は賑わっていたけどすぐに座る事が出来た。
即行でドリンクバー!と手を上げるリエーフ。なんかドリンクバー混ぜ合わせて不思議ドリンク作りそう。
即行でメニュー開く及川。覗き込むと激辛メニュー…なにこの激辛フェア…激辛・超辛・地獄…なにこれ楽しそう。二枝に食わせよう。というか及川辛いもの好きなのか…。女子とか甘いモノ好きじゃないんだ。
馬鹿二枝は即行スマホを見る。いやそれよりメニュー見ろよ。…コイツの飯は超辛の何かに決定。麻婆豆腐とかで良いか。決定。さて、俺は何にしようか…。
「えーっと、ドリンクバー4つとハンバーグセット、親子丼、超辛麻婆「ちょっとまてそれは誰の注文だ」おまえだよ「あー!俺は醤油ラーメンで!!」…チッ、すいません麻婆止めて醤油ラーメン…と」
「地獄カレー…あ、でも麻婆食べたくなっちゃった…」
「…えーっと、地獄?麻婆でお願いします」
「はーい、ではご注文を確認させていただきます。ドリンクバーが4つ、ハンバーグセットがおひとつ、親子丼がおひとつ、醤油ラーメンがおひとつ、地獄麻婆がおひとつ。オプションで辛味増し増しで」
「!?」
何辛味増し増しって。及川何で親指立ててる。なにこの店員さんと仲良しか。何も言わずにオプション追加って…地獄の辛味増し増しって…。「少々おまちくださーい!ドリンクバーはあちらになりますので」と店員さんは行ってしまった。
「地獄辛味増し増しって…」
「あかりいつもの事だよな」
「うん」
恐ろしい。
聞くところによると及川は甘いものが嫌いらしい。…そういえば隣駅に激辛煎餅売ってる店あったな…。今度買ってきてやろうか。あ、ちゃんと二枝の分も買ってくる安心しろ二枝。「…今なんか寒気がした気がしたんだけど」気のせいだ安心しろ。
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しっかり者東月君の趣味は二枝いじめ
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