<及川徹の話>


『というわけで音駒バレー部があかりちゃんをイタダキマシタ』
「しんでしまえ」
『お兄ちゃん嫉妬深いよーあかりちゃんに嫌われるよー。あ、嫌われてるのか』
「苦しんでしね…!」

電話の向こうで笑う黒尾をぶん殴りたい。なんでも、今日あかりはバレー部のマネージャーとして入部したらしい。なんであいつマネージャーなんかやるの…絶対そんなのやるタイプの人間じゃないのに。『お前の知らないところで、あかりちゃんは成長してるぜ』という言葉に唇を噛んだ。

『でさー、あかりちゃんに対して恋心を抱いた奴が居るんだけど』
「は?」
『で、そいつが気になってる事があるんだけど』
「ちょっとまって、その前に聞きたい事が」
『あかりちゃん彼氏いた事ある?』
「……は?」

何言ってんだこいつ。あかりにそんな奴いるわけないだろ。『じゃあ徹が知らないだけかもな』と言う言葉にミシッと携帯電話が音を立てた。俺は、結構あかりを見ていたつもりだ。…まぁ知らない事もあるだろうけど。彼氏なんか絶対居なかった。というか許さないし。

『なんか手慣れてるっていうか?』
「手慣れてるって何!?」
『あと、あかりちゃん運動得意?めっちゃ動きいいんだけど。あれ、教えたらバレーの選手になれるくらいだ』

ハァ?と声が出てしまった。いや、だってアイツのどんくささは折り紙つきだ。何にもないところでよく転ぶし壁に激突するし。あいつの運動神経云々より、誰だよあかり好きになった奴そっちが気になるんだけど…!

『バレーの上手いやつで、あかりちゃんと仲が良かった男居ない?』
「………岩ちゃん?」
『自分で違うって分かってんのに相棒の名前出すなよ』

でも、岩ちゃん以外あいつと関わりある奴なん、て…?




「及川、そういえばあかりは元気か?」




去年あたりの、インターハイの奴の言葉を思い出した。そうだ、あいつなんであかりの事を知っているんだ、とその時俺はキレて、それで。

「は?」
『うん?どうした』
「……あんのウシワカァ…!どこであかり引っかけた…っ」
『え、ウシワカってあれ?世界ユースの?え、マジ?』
「ちょっと白鳥沢まで行ってくる」
『お前もう11時になるけど落ち着けシスコン』
「シスコンじゃないし」
『お前もういい加減にしろ』

でもそっかー世界ユースのウシワカかー、なんか納得。と言う黒尾にイラっとした。何がどう納得なのか。あかりの彼氏、いや元彼?がウシワカで納得だって?『いやちげーよ、運動神経の話だよお前煩悩捨てろよ』煩悩無いし何言ってんの。

『お前ほんとあかりちゃん好きだな』
「うるさい大好きだあんな妹!」
『その大好きな妹に彼氏出来ても死ぬなよ』
「彼氏とか許さないから」
『前途多難だなぁ…』
「ていうかあかりの事好きになった奴って誰っ!?」
『俺の友達が徹に殺されそうだから言わねー』
「呪う」
『こえーよ』



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拗らせシスコン及川徹。そろそろ危ない


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