ようやく、スタートラインについた。




日曜日、晴天。時計は7時前を指していた。
昨日、部活何時からか聞いておけばよかったな。と思いながらパンを焼く。スーパーのお隣にあるパン屋さんが特売だったから、食パンがたくさん。暫くお米はおやすみです。お昼とか、どうしようかな。カップにインスタントコーヒーを入れてお湯を注ぐ。
携帯電話が震えた。パンを片手に、画面を見ると昨日連絡先を交換した研磨さんからだった。

<部活開始は9時、大体みんな30分前には自主練し始めてる。監督とコーチは7時半には学校に居るよ>

知りたい事全部書いてあった。あの人すごい。<ありがとうございます>と返信し、コーヒーを飲む。うん、おいしくない。寮のおばさんから貰った(押しつけられた)コーヒーは今後封印決定。
学校指定のジャージに着替える。職員室行く前に、花壇の水に水を上げよう。驚くほどに、私の迷いは無かった。さて、今日一日頑張ります。美味しくないコーヒーを一気飲みした。





▽△▽


「え、と……今日からお世話になります。及川あかりです……よろしくお願いします」

目の前の、集団が怖いです。リエーフ君と黒尾先輩に挟まれ慣れたとはいえ、まるで大木のような大きな男子を前に、多少びくついてしまう。その筆頭、リエーフ君はすごくきらきらとした目で私を見ていた。黒尾先輩の視線は無視します。夜久先輩は…?なんか複雑そうな顔をしていた。なんでだろう。「シャーッス!!」というバレー部員の声にびっくりしてしまい、そんな考えは四散してしまった。

「一年は仕事教えてやれー」

一番に駆け寄るのは、当然リエーフ君なわけで。

「あかりー!」

両脇掴まれ、持ち上げられる。今の私の身長2m超え。遊ぶな、と夜久さんに蹴られるまでがセット。色々慣れてしまった。

「ま、自己紹介が最初だな。3年主将の黒尾鉄朗デス」
「知ってます」
「副主将の海信行、3年。よろしく及川さん」
「よろしくお願いします」

さて、少し遠くであわあわしているモヒカンさん達に近づくべきか…。なんて考えていると研磨さんに「あれは特に気にしなくていいよ」と言われた。気にしなくていいよ、とは。

「俺、犬岡走。1組!よろしくな!」
「4組の芝山優生、よろしくね及川さん」
「俺、3組のリエ」
「リエーフ君も知ってるから。よろしくね」

一部挨拶できてないんですけどいいんでしょうか。「じゃ、1年でマネージャーの仕事教えるね」という芝山君に頷いてしまったから挨拶は諦めた。







「あかり、ボール拾いが変に上手いよな」

壁に寄りかかり、スポーツドリンクを飲む夜久先輩に声を掛けられた。そう言えば今日初めて言葉を交わす。「ちょっと、慣れてるんで」そう言うと何だそれ、と夜久先輩は笑った。いつもの、夜久先輩だ。さっきのは、何だったんだろうか。

「ワンバンして、まだ勢いがあるうちにキャッチしてかごに入れて。のスピードが半端無いんだけど。ちょっとゆっくりな反復横とびに見える。割と体力居るだろ」
「投げられたボールをひたすらキャッチする修業をしていたことがあったので」
「なんの修業?」

笑う夜久先輩と私を間をボールが横切った。すぐ壁なので、ぶつかって床に落ちる。

「ほれほれ、そこいちゃいちゃすんな」
「黒尾そこに直れ」
「黒尾先輩今日顔がウザいです」
「最近いつもだから気にすんなあかり」
「ほんとお前ら酷いよな」

あかりちゃん初日だから午前で帰っていいよ、という黒尾先輩に声が漏れる。「別に疲れてません」と言うとぺしん、と夜久先輩に頭を叩かれた。

「結構、しんどいだろ。マネージャーだって体力仕事だし。初日で慣れないだろうし」
「…でも、全然…」
「夜久の言うとおり。明日も頑張ってもらうつもりだし、あんまり無理させたくないんだから」

監督もコーチも了承済みだから。な?という黒尾先輩に仕方なく頷いた。




▽△▽


あかりが帰った後、休憩を取り午後練が始まる。「ぶっちゃけさ」と黒尾が言葉を漏らした。

「あかりちゃん予想の遥か上を行ってたわ」
「あー…あれな」

あっちから打ってるとき、何度かあかりちゃん部員と間違えてボール打とうとしちまったもん。と黒尾は笑った。というか実際間違って打ってただろ。ボール拾いなのに構えが凄まじかった。真っ直ぐと飛んで行った黒尾の打った球を、平然と正面でキャッチするあかり。レシーブ教えたら絶対上手く返すぞアレ。

「リベロに育てるか?」
「いいかもな…いや、やらないけど」

あれ、教えたらリエーフより絶対上手くなるよなー。っとぼやいたら「夜久先輩酷い!」とリエーフが声を上げた。実際そうだと思うけど。

「夜久」
「なんだよ」
「お前昨日から少し変だな」

俺は気づかなかったけど、研磨が言ってた。流石ウチの自慢のセッター。よく見てる。「あのさー」俺は天井を見上げた。あ、リエーフがホームランしたボールが引っかかってる。

「あかり彼氏居たことあんのかな」
「……は?」


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