<及川徹の話>


最近、可愛げのない大嫌いな妹の学校の先輩…俺と同じ学年の男と電話をするようになった。最初はラインだったのに今じゃ面倒だからと電話だ。どうしてこうなった。電話の向こう側にいる男は、どんなムカつく面をしているのか。取りあえず俺の敵と認定している。あとよく会話に出てくるロシアのハーフ。聞くところによるとあかりにかなりべたべたしているらしい。むかつく。夜久という人間に対してはよくわからない、が本音だ。あんまりやりとりしたこと無いし。

『でさー、あかりちゃんをマネにしたいんだけどどう思うお兄ちゃん』
「お兄ちゃんって呼ぶな。あとあかりをマネージャーに、なんて認めない」

同じくバレー部である電話の向こうの男、黒尾鉄朗は笑う。俺は笑わない。毎日毎日、飽きずにメッセージか電話を飛ばしてくる。暇人かよ。それに毎回出てしまう俺もまた、暇人なのかよとツッコミを入れたくなる。DVD見る時間減らしてるんだけどね。

『兄が大好きなバレーが苦手、って言ってたけどお前何したの?』
「…岩ちゃんが、あかりにバレー教えてたんだ」
『え、なに。自分の親友にでも嫉妬したの?お前』
「ちがう。どんくさいあかりがバレーして突き指でもしたらどうすんのさ」
『想像通りだけど、お前…。それであかりちゃん睨んじゃったとか?』
「俺の顔見て、物凄いスピードで逃げてった」
『大爆笑していい?』
「しね」

俺も悪いよ、というか全面的に俺が悪いのは分かってるよ。でも、ほんと怪我でもしたらどうすんのさ。あいつ、何もないところでよく転んでよく流血騒ぎ起こしてたし、危ないんだよ本当に。つーかバレーやってみたいんなら俺に言えよ!まったく!

『徹は本当にあかりちゃん大好きだよな』
「だいきらいだあんな妹!」
『じゃあ妹さん俺らにクダサイ』
「ぜったいやだね!」
『お前もうほんとに素直になれよ』

わかってるよ!出来たら苦労しないってば!バタバタと足をばたつかせる。下で「徹五月蠅いわよ!」と母さんの声が聞こえた。あーもー!このムカつきを一体誰にぶつければいいんだ。

『間違ってもぶつける相手をあかりちゃんにしちゃいけねーぞ』
「しらない」
『あ、そうだ。近々本当に「妹を俺にください」って言いに行くわ』
「誰が嫁に出すか!」
『嫁まで言ってねーし。彼氏候補は何人かいるけど。俺含め』
「しね100回しね」
『ははははは』
「マジでむかつく」

あかりに彼氏とかまったく想像がつかない。「あかりちゃん、割とクラスに仲のいい子が出来たらしいぜ?」という黒尾の言葉にですら想像できない。あいつ、友達いた事あったっけ…?いつも岩ちゃんがあかりを構って…あ、岩ちゃんに対しても苛々してきちゃったごめん岩ちゃん。

「俺があかりと普通に会話できるまで彼氏とか作らせない」
『どんだけ自己中?あとお前の場合普通って無理だから。ツンかデレデレの極端2択だから』
「え、意味わかんない」
『お前、動物可愛がり過ぎて逃げられるタイプの人間だろ』
「………」

近所の犬に思い当たる節があったけど、うん気のせいだ。


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