※ぬるい性描写表現有り

Bonheur






蓬生の腕がゆるやかに東金の背に伸びた。深くお互いを確かめ合うような口づけの後、千秋は白いシーツに広がる蓬生の髪をなぞるように撫でる。
10月になって最初の日、ドライブに行くから車を出せと蓬生を呼び寄せてから、そのまま神戸でも名高い旅館で一晩。蓬生も呼び出された時から既に宿泊することは把握済みだったらしく、千秋のいきなりの案にもあっさりと了解した。

「…けどほんまによかったん?俺の分の宿代くらい払おか?」
「気にするなって言ったやろ」
「せやけど今日は――、っ」

千秋は髪を撫でていた手を蓬生の白い肌へと滑らせ、胸の突起を指の腹で押さえ付けた。途端にピクリと反応を示す蓬生の躰に満足げに笑って、朱く染まってきたその突起にわざと音をたてて吸い付いた。

「あっ…それいや、や……ちあき…!」

双方の突起を片方は手で、もう片方は舌で転がすと、蓬生は華奢な躰を捩って快楽に悶える。座敷に敷かれた布団の上で着物を上半身だけ脱がされた蓬生は、千秋の性欲を沸き立てて自制心を奪う。

最初に誘ってきたのは蓬生の方だった。


部屋に備え付けてある露天風呂から上がった千秋を、一足先に上がっていた蓬生が手招きで呼び寄せたかと思うと、まだ温かさを残す蓬生の腕が伸びてきて唇が重なった。そのまま何も言わず、妖艶に目を細めて笑う。そんな風に誘われるなんて思ってもみなかった千秋は少し驚いたが、もともとそのために宿を借りたのだからと口元をつり上げた。

「――…んっ……、千秋…まだ髪濡れとう…」
「乾かす前にお前が誘ったんやろ」

タオルで軽く拭いただけの髪から滴り落ちる滴が、蓬生の頬に落ちてくすぐったそうに笑う。千秋はそれを親指の腹で拭いてやり、再び貪るように口付けた。自ら誘うように差し出された舌に自身の舌を絡ませると、濡れた水音が響いて溢れた唾液が糸を引いて伸びる。
今まで数えきれない程のキスを交わしてきたが、毎回溺れるように感じる蓬生に千秋はいつも胸の奥が熱く疼くのだ。

「お前…本当キスされるの好きだな」
「……千秋のキスが上手すぎるのがいかん…最近は特にな…」

乱れた息を整えながら、蓬生は眉を寄せて不服そうな顔をした。
やり始めはお互いが初心者で不器用なキスだった。それが千秋だけ上達しているのが不満らしい。そもそも、これだけ毎日のようにキスをしていれば蓬生の感じる所なんてとうに把握しているし、蓬生も随分と官能的なキスをするようになったんだが。と思った事実はあえて口には出さず喉もとで止めた。

「もう一回、こっちも弄ってやろうか?」

キスばかりに夢中になり、置き去りにされた仄かに染まったままの胸の突起に再び指を這わせようとして、伸ばした腕は蓬生の手のひらから制止される。

「や、そこはもうええから。もっかい、キスしてくれへん…?」

蓬生の白い肌が朱く染まった姿は煽情的で、千秋とぶつかった視線が熱で潤んで揺れている。それでいて甘い言葉を紡ぐものだから、千秋はたまらず息をのんで噛みつくように蓬生の唇を塞いだ。

「その言葉は反則や―――、」
「んぅ! っ……、ん…」

蓬生の髪に指を差し込んで後頭部を引き寄せ、離れることを許さない。蓬生も千秋の首に腕を回してきて。それと同時に下腹部で先走りをこぼす蓬生のものを手で包んでやると、ビクリと身体を震わせて千秋の首に回す腕の力を強くした。そんなこはと気にもとめず、千秋は手の中のそれを数度扱いてやり、搾り出すように手を動かしてやる。

「んっ…んんっ、 ぁ……や、あッ!」

全く触れずに敏感になっていた蓬生は直ぐに限界に達し、千秋の手のひらに白濁色の液体を放った。肩で息をしながらくたりと布団へと身体を沈める蓬生に、千秋は手の中の白濁色をてらてらと指で伸ばし、蓬生の後孔へと滑らせる。千秋の指が白い肌を滑る度、躰を震わせて反応する蓬生に千秋自身ももう限界を迎えようとしていた。

「…っ、俺ももう我慢できねえ…蓬生、」
「ん……ええよ…、今日の俺は千秋のものや」
「ハッ、いつも の間違いだろ?」
「今日だけ特別って感じを出したいやん…?」

そう言って小さく耳元で囁かれた「誕生日おめでとぉ」という言葉に、千秋はふっと満足気に笑った。今夜は長い夜になりそうだな。なんて、柔らかく微笑む蓬生を見遣りながら、至幸な時間に浸ろう。









20111025



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