ヒカリ降る夢




ひらひらと蝶が舞うキレイな世界に立っていて、キラキラとヒカリ降る夜空の下で僕はひとり。
僕の周りには無数の白いキレイな蝶と、きらびやかな月光花が咲いている。
さやさやと風に乗ってやって来るのはそんな純白の花びらと蝶の輝くキレイな粉塵。
(このキレイな世界に、僕はひとりだった)
押し寄せてくる絶望感。
そんなキレイな世界を一通り見渡して、一際ヒカリ輝く場所を見つけた僕は、そこへと向かって歩きだす。
僕が歩いた道にはキラキラとキレイな光りが残されて、まるで自分が蝶になったようだった。

しばらく変わらない風景の中を歩いて光り輝く場所についた僕は、そこにひとりの人影を見つける。
身体の周りに蝶を遊ばせて、長身の黄色い髪の成年は僕に向かって柔らかく微笑んでくれたんだ。


「―ちょっと待て、ラブ」
「どうしたの、フラウ?」
「何の話しだ、それ」
「うん、僕がみた夢の話し」
「夢?…ああ、夢の話しな。なら最初に“夢”って言え」

ラブラドールと肩を並べてベッドの淵に座るフラウが一息ついて、「急にそんな話しをされても困る」と続けた。
ラブラドールはその言葉に軽く謝罪をして、「今日見た夢の話しなんだ」と軽く説明を入れる。
そう、これは夢の話しなんだ―




柔らかく微笑んでくれた長身で黄色い髪の成年は、僕に向かって片方の手を差し出した。
僕は少し戸惑ったけれど、差し出されたその手にそっと触れる。
触れた手の平は彼によって優しく包まれ、繋がった部分から伝わる確かな熱の心地よさに僕はそっと目を閉じた。
(このキレイな世界に、僕はひとりじゃなかった)
計り知れない安堵感。
いつしか僕は長身の彼の腕の中にいて、抱きしめられた状態で優しく背中を撫でもらっていた。
まるで子供をあやすかの様に優しい腕は、何度も何度も、ゆっくりと優しく僕の背中を上下する。


「…って、えらく急展開だな」
「仕方ないよ、夢だもの」
「まあそうだが、」

自身の夢の話しにくすくす笑うラブラドールに対して、フラウは少し困ったように息を吐く。
現実は夢と違ってキレイな世界でもなく、夜の闇夜にも忍び寄る無数の影は今だ減ることもない。
だけどただひとつ言えるのは、あの夢に出てきた長身の成年はラブラドールの見る限り、間違いなくフラウだったということ。

「ねえフラウ、僕を抱いて?」
「…少し唐突すぎねえか?」
「夢で抱きしめられたとき、なんでかすごく安心したんだ」
「だが、俺は夢の中のそいつとは違うぜ」
「うん、知ってる」
「…お前の気持ちは?」
「嫌なら、あんなお願いしないよ」

「確かに、な」

ギシリとベッドのスプリングが軋んで、ラブラドールの身体は綺麗に敷かれたシーツの上に押し付けられた。
突然の事にも動じないラブラドールを見るなり、フラウはその唇に濃厚なキスを落とす。

「分かってると思うが、夢の中のあいつみたいに俺は優しくないぜ?」
「…分かってる、今ここにいるフラウが本物だもの」

片方の手でラブラドールの髪をくしゃりとかき上げれば、漂う甘い香りと少し潤んだ大きな瞳。
もう戻れない。再びフラウはラブラドールの唇を塞ぎ、何度も何度も角度を変えながらラブラドールの口腔を侵食する。

「…っ」

長い長い接吻に酸素を求めて開いた瞳はすぐに細められ、天井から下げられたライトの逆光で隠されたフラウの表情に
ラブラドールは再びぎゅっと目を閉じた。

「恐いか?」
「、そんな事ない…!」
「だったら目、開けてろ」

乱れる呼吸、酸素を求めて上下する胸、乱される服装、響くのは粘液の絡まる音と、2人の熱い吐息だけ。
首筋に噛み付くような熱い感覚を落とされてラブラドールは身体を軽く跳ね上げた。
甘い甘い声を零しながらじわじわと、まどろみへと溺れていく―




ひらひらと蝶が舞うキレイな世界に立っていて、キラキラとヒカリ降る夜空の下で僕らはふたり。
僕らの周りには無数の白いキレイな蝶と、きらびやかな月光花が咲いている。
さやさやと風に乗ってやって来るのはそんな純白の花びらと蝶の輝くキレイな粉塵。

そんなキレイな世界で僕らは出会い、繋いだ手てのひら、いつしか大きな腕に抱きしめられて優しく背中を撫でられる。
その腕に答えるように、僕は大きな背中に腕を回してぎゅっと掴んだ服、そしてその胸に埋めた顔。
僕らは出会ったときからずっと、愛しあっていた。

そんな、夢のはなし。










20100130





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