心安い言葉を吐いて




平凡でありきたりな日常は退屈だったり暇だと言う人も多いけど、僕はそんな『普通』の日がとても好きだったりする。
何事もなくてただ日が昇り沈んでいく。これを平和と言わず何というだろう。
大切な人と一緒にいれて、話して、笑って、笑い合って、それだけで十分。
(これは『特別』の分類になるのかな)

「本当、フラウにそっくりだね」
「でしょう?力作ですから」
「愛情がこもってるって感じだよ」
「まさか、この場合は憎しみですよ」
「そう?」
「ええ。ほら、顔なんて紙に描いて貼っただけです」
「ふふ、そうだね」

人形を作るのが得意な彼が特訓用にとフラウ似の人形を作っている。
いつもは一体一体丁寧に作り上げる彼が今日は少し雑な感じだけど、(あんまり似せるのも、逆に可哀相だからかな)
くすりと笑う。酷い扱いをしているけれど、大切な仲間だから。
素直じゃないんだ、僕を含め、みんなね。

「この人形のこと、フラウは知っているの?」
「ええ、これで5体目ですので」
「そんなに作ったんだ」
「もう飽き飽きしますよ」
「でも、テイト君のためだね」
「その通りです」

交互に紡がれる言葉。こんな淡々とした会話が好きだ。重くもなく、軽すぎることもなく。だけどとても深い。
矛盾してるなんて分かってる。
だけど、この世に意味を持たない言葉なんて存在しないから、僕にとってはどれもが貴重な会話になる。

「あ、噂をすれば、」

慌ただしい足音が聞こえだした。人形のモデルとなった人物が来たようだ。

「おいカストル!お前また変な人形作りやがって!」
「変な人形とは失礼な」
「うわ、まだいるのかよ…」
「ええ、テイト君に思う存分、倒してもらおうと思いまして」
「俺に似せなくてもいいだろーが」
「その方がやる気が出るでしょう」
「どういう意味だよ」
「そのままの意味です」

「…おいラブ、お前も何とか言ってくれ」

うんざりしたように助けを求めてくるフラウ。
僕はそれにくすくす笑うだけ返すと、もう駄目だとばかりにフラウは大きなため息をついた。
違うよ、僕はフラウを否定したわけじゃなくて、
(ただ、こんな時間が好きだなって思っただけ)


「喧嘩するほど、仲が良い証拠だよ」


言い合いを続ける2人の間に割って入って、制止を促す言葉をかける。
途端に、『よくねえ!』 『ありえませんね』 と否定する2人の声がアンバランスに重なった。それに僕はまた笑う。
大切な仲間と冗談を言い合えて、笑って、笑い合えて。(僕は幸せだな、)
冗談を言い合えることはとても素晴らしい事だから。僕はこんな日常が好きなんだ。










20091104





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