ナルトが旅行に出かけた。それを聞いたサスケが羨ましがって追いかけようとしたけど、はたけさんに𠮟られて断念した。らしい。

「いやぜんぜん違うから。ほのぼのしく言うのやめて笑う」

「もう笑ってるじゃん」

 言い終わるや否や吹き出した将軍の足を踏む。「いたいいたい」将軍が笑いと足を引っ込めて、ため息をこぼす。私の肩の上で、白銀があくびをした。

「ナルトは三忍の自来也様と修行に行ったんだよ。で、サスケはナルトだけ伝説の忍者に指導してもらうのは納得いかないって追いかけようとしたわけ」

「つまりナルトがおじいちゃんと旅行に出かけて、サスケが羨ましがって追いかけようとしたんでしょ。間違ってない」

「ニュアンスが違う」

 将軍が頬を引き攣らせた。呆れの意味なのか、笑い出しそうになるのを自制してなのかは不明。後者ならともかく前者なら解せない。割愛したり簡易に言い換えたりしてるだけで、私は間違ってない。緊張感をほぐすために茶目ただけだ。

「ところで、なんでそんな話?」

「え? えーっと……同期の近況報告?」

「べつにいいのに。生死に関わらなければ興味ないし」

「安定の大雑把さ」

 将軍が呟いた瞬間「うわぁっ!」チョウジが吹っ飛んできた。結界で包んで、安全に地面に下ろす。「ごめーん」いのの声が飛んできた。

「……いの、才能あるな」

「センスはくのいちの中でも抜きん出てるって、アスマ先生も言ってたからね」

 それにしても、いまの“烈波”は凄まじい威力だった。チョウジは完全に目を回してる。将軍は青白い顔で苦笑い。シカマルもいのをガン見してた。


 強くなりたいから、修行つき合って。ていうか忍術とか体術とか教えて。と、いのに頼まれたので、将軍と修行してる場所にて第十班プラス将軍で修行中です。

 なんとなく“烈波”を教えてみたら、すごいことになった(物理)。いのの練習による犠牲者続出。将軍が人形を用意してたのに、いつの間にか生身の人間が練習台になっている。なにゆえ。あ、受身の練習も兼ねてるのかもしれない。一石二鳥作戦ですか、さすが第十班のリーダーシップ。

「休憩にさせようぜ」

 つらつら考えてたら、将軍が言った。シカマルまで吹っ飛ばされて、かわいそうになったのかもしれない。もしくは、いのが「ねぇ山吹、ヒマならつき合ってー」と声をかけてきたからか。たぶん後者だ。挑むまえから逃げを打つとは情けない。なんて思いつつも、いのに休憩だと告げる。男子が心配だからであって、断じて将軍のためではない。

「意外とカンタンね、“烈波”って。山吹がむずかしいとか言うから身構えたのに」

「気遣いだっつの。カンタンだって言っといて実際むずかったら怒んだろ」

「単純に向き不向きの問題だよ。いのには合ってたってこと」

「魔王様、言ったそばからムード壊すのやめて」

「ムードなんて作れてなかったけど」

「悲しい」

「うるさい」

 泣き真似をはじめた将軍を、いのが殴り飛ばした。それを無視して、チョウジとシカマルの容態を確認。ところどころ打ち身してるけど、忍者だし男だし大丈夫だと思う。痛みをバネに強くなってほしい。どこかで聞いたセリフだけどどこだったっけ。どこでもいいですね興味ないですね。

(受け身の練習もしないとなぁ……)

 一つ上の青春班(あだ名つけてみた)とまではいかなくても、ある程度の体術スキルはつけておいたほうが便利だと思う。護身術程度に。身を守る術はいくら知っても損はない。むしろ生きていく上で大切な知識。

(でも“烈波”をいなす体術かぁ……)

 日向一族の“回天”くらいしか思いつかない。あれは無理ですね考えなくても分かります。

(でもチャクラではじくっていうのはいいな)

 直接はじくのはリスクが高いから。けどチャクラで盾かぁ。放出したチャクラを静止させるのもむずかしい。

(極論、カウンターがいちばん手っ取り早いんだよなぁ……)

 敵の攻撃に合わせて、チャクラを放出して相殺する。チャクラの爆発が相手の攻撃力を上回って、相手がダメージを食らったらシメたもの。私もよくやる。

「ってことは、いのが“烈波”してきたタイミングで“烈波”し返して相殺するのが手っ取り早いってことか」

「……んな器用なことできっか」

 結論を出したところで、シカマルが復活した。「おはよう、シカマル。気分は?」「最悪」……具合が悪いという意味なのか、いのに吹っ飛ばされてバツが悪いという意味なのか、どっちだろう。両方かな。

 とりあえず水筒を差し出す。「わりぃ」シカマルが喉を潤した。「ボク……も、ポテート……」「おはよう、チョウジ」水より先にお菓子。安定だった。

「……いの、すごいなぁ……」

 チョウジが呟いた。視線がなぜかちょっと遠くの空に向いている。何かあるのかな。同じ方向を見てみると、将軍が宙を舞っていた。結局いのの練習台になったらしい。災難だ。

「……すごいなぁ……ボクと違って……」

 将軍がなんとかハリーのボールの上に乗っかったのを見届けてたら、チョウジがネガティブモードに突入した。

「シカマルみたく頭よくないし……いのみたいにセンスないし……イツルよりぜんぜん弱いし……」

 もそもそ呟きながら丸まってしまった。私はシカマルを見た。目が合う。おいなんとかしろよ。って目だ。

「……でもチョウジ、いちばん優しいよ」

 ぽんぽん背中を撫でて言ってみる。

「でも優しいだけじゃダメだって、みんな言うよ……」

 しかし効果はないようだ。シカマルがため息をついた。

「んなやつらほっとけ。真に受けてても仕方ねーよ」

「……うん……」

「強いけど優しくない男はアイドル感覚でモテるけど、弱いけど優しい男のほうが結婚相手として選ばれるよ」

「おまえは何の話をしてんだ」

 シカマルが私を見た。眉間の皺がすごい。

「……男と優しさについての見解?」

「イツルも意外とアホだよな……」

「よく言われる」

「だろうな」

「……ハハ」

 チョウジが笑った。よく分からないけど、チョウジの元気が取り戻せたので良しとする。細かいことは気にしたら負けですね。

攻撃と防御のレクチャータイム
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