【はたけカカシ】 修行の最中、サスケがチャクラ切れで気絶した。ついやりすぎたと反省して、サスケを病院に預けて、ふらっと里を歩くことにした。なんか軽食を買っていこうかなと思い立ってね。 何食べようかなーと考えながら歩いていると、ふと見知った子を発見した。アスマのとこの一流ちゃんだ。いつものように白銀(という名の未確認生命物体)を肩に乗せて、のんびり歩いている。さりげなく近寄っていくと、三メートルくらいの距離で気づかれた。 「……あ」 空色の目がぱちくりと瞬く。そのあいだに距離を詰め、オレは「や」と軽く手を上げて挨拶した。一流ちゃんは礼儀正しく「こんにちは」と会釈。うん、かわいいね。うちの班員もこれくらいかわいげがあればいいのに。……って。 「ちょっとちょっと。一流ちゃん、どこ行くの」 踵を返していた一流ちゃんを引き止める。一流ちゃんはくるっと振り向いて小首をかしげた。「でもアスマ先生が」って言葉だけですべてを察して、オレは脱力。あいつ、オレのことなんだと思ってるの。 「……傷つけてしまったのならごめんなさい」 「あー、ううん。一流ちゃんのせいじゃないから」 オレの様子を見てしゅんとなっちゃった(風に見える)一流ちゃんに、慌てて「気にしてないよ」って繕う。この整いすぎてる顔にそんな表情されると心臓に悪い。ついでに周りからの目も痛い。 「……一流ちゃんさ、いまヒマ?」 とりあえず目についた甘味処にでも入ろっかな。なんて思いながら聞くと「いまは、まぁ」と曖昧に返された。めげずに「団子とか好き?」と聞いてみると「……みたらし団子が好きです」って返ってくる。オレはにっこりと一流ちゃんの頭を撫でた。 「食べよっか。オニーサンがおごってあげるから」 「いえ、お代は自分で払います」 「オレにも男のプライドってモンがあるのよ。オレの顔立ててくれない? それとも、団子をおごる余裕すらないような情けない男に見える?」 「年下の後輩にラーメンをおごらせるような情けない男だと、アスマ先生が」 「……あらら」 ため息をひとつ。よくもまぁいろいろと吹き込んで……アスマはよほどオレを警戒してるらしい。ガックリと肩を落としてみると、一流ちゃんが困ったような顔で視線をさまよわせた。その肩の上の白銀は呆れたような表情だったけど。なんだろうね、こいつ。動物らしくない。白銀を見てると、一流ちゃんがおずおずと口を開いた。 「……あの、やっぱり今は手持ちが少ないので、ごちそうしていただいてよろしいでしょうか?」 「うん、おごらせて」 「……では、よろしくお願いします」 明らかに気を遣われてるなって実感しつつも、ちょんと頭を下げる一流ちゃんに、オレは「任せなさい」と笑いかけた。 (……つかめないんだよなー) 団子を注文して一息ついたところで、思う。向かいに座った一流ちゃんは白銀の足を丁寧に拭いてやっている。その繊細そうな指先も含め、パーツは何もかも(色以外)フブキさんにそっくりだ。……見た目だけだけど。 小さいころは黒髪黒目だったって、いつだったか三代目が言ってたな。いつだっけ。たしか、アレだ。第七班の担当上忍に任じられたとき。扱いが面倒な男二人が班員かって冗談まじりにぼやいたら「紬の子を入れるのをやめただけマシに思わんか」ってマジトーンで言われたんだ。そのついでに、一流ちゃんについて少し聞きかじった。 一流ちゃんの性格が悪い意味で繊細だったら、オレの班になってた。そう言われたときはビミョーな気持ちだったなー。苦労するのはキライじゃないけど、できれば遠慮したいしね。 でも、こんなおもしろい子だったらほしかったかも。なんて思ったとこで、ふと思考が逸れる。ドスとかいうヤツがフブキさんについていろいろ言ってた(ってアスマが言ってた)けど、一流ちゃんはどう思ったんだろう。見た感じ、平気そうだけど。 じーっと見てたら、団子が運ばれてきた。一流ちゃんが店員に礼を言って受け取って、オレを見る。 「ごちそうになります」 「うん、どーぞ」 一個を白銀に与えてから団子を頬張る一流ちゃんを眺めつつ、オレも団子を手に取る。一流ちゃんが顔を上げて、きょとんとした顔でオレを見つめてきた。……やっぱり、オレの素顔が気になるとか、そういう感じかな。素知らぬフリで「どーかした?」と首をかしげてみると、一流ちゃんは団子を飲み込んだ。 「はたけさんって、ものを食べる生き物なんですね」 「……待ってそれどういう意味。オレのことなんだと思ってたの」 予想外の言葉をもらってビックリした。この子もともと発言が予測不能な子だけどさ。でもぶっ飛びすぎでしょ。思わず団子を皿に戻すオレに、一流ちゃんは「一応、人間だとは思ってましたけど」って不思議そうな顔で返す。……いやそうじゃなくてね。 「食べずに生きていけるヤツだと思ってたの?」 「なんか、空気とかをエネルギーに変換して活動できる感じの、エコな忍術でも使ってるのかと」 「そんな便利な忍術あるわけないでしょ。あったら使いたいけど」 すごい発想するな、この子。内心で度肝を抜かれる。オレの心中を知らない一流ちゃんはのんきに「私もです」なんて言う。……マイペースだ。ユニークだし、ホントおもしろい。ふと笑みをこぼして、オレは頬杖をついた。 「オレの顔とかは気にならないの? どんな顔してるのかーとか」 「美形だろうなーとは思ってます」 「並みの美形じゃないよ? その気になれば初対面の女性に告白させられるくらいの美形だよ。すごいでしょ」 「私だって、この顔ならがんばれば初対面の男子に告白させられる気がします」 「うん、がんばらないでね。がんばったらダメだからね」 しまった、この子オレにツッコミを入れてこない子だった。返事を聞いてソッコーで諭す。一流ちゃんは「笑えない冗談でした、ごめんなさい」って謝ってくれたけど、逆に不安になったのはなぜだろうね。 この会話がアスマの耳に入らないように祈りながら、オレはひとまず団子を食べることにした。 **** カカシ先生との絡みがおもしろそうだと思ったので、書いてみた。どうしてもアスマ先生をはさみたくなる。たぶんツッコミがいないせい。かといってカカシ先生にツッコミをさせるのもな。っていうジレンマ。むずかしい。 この二人組は見た目ほんわかしてそう。会話もふわふわしてそう。もうちょっと仲良くなると、子どもっぽい屁理屈とか生意気とか言ってくれるようになる。 団子とエコの修行帰り |