第二回戦は、サスケとヨロイの試合だった。これは原作通りの対戦なんだろう。将軍がそこまで衝撃を受けてなかったし。サスケが勝ってフェードアウトしたのち、シノがザクに勝った。それからカンクロウがツルギに勝って、そのあと、いのとサクラが引き分け。テンテンさんがテマリに負けて、シカマルがキンに勝って、ナルトがキバに勝って、ヒナタが日向さんに負けて。

「おいチョウジ、おまえヤベーぞ。あと強ぇーのしか残ってねーだろ……イツルとか緑タイツはまだともかく、あの音のヤローは容赦してこねぇだろうし……」

「い、いいよべつに……ボクすぐに棄権するし……」

「私の心配はしてくれないの?」

「おまえは絶対防御あんだろ」

「でもチャクラ切れたら結界も使えなくなるよ?」

「イツルがチャクラ切らしてバテてるとこ、私見たことないわよ」

「まぁスタミナには自信あるし」

「じゃあ問題ねーだろ」

 ポンポン言い合ってたら「うおおおおおお!!」ってチョウジが叫び出した。何事。思わず見ると、野球の審判がセーフ判定したときみたいなポーズをしていた。

「セエ―――フ!!」

「よかったね」

「イツル、他人事じゃないぞ。おまえの番だ」

 アスマ先生が電光掲示板を指さした。視線を向ける。

 ドス・キヌタ vs ツムギ・イツル

 瞬きをして視線を滑らせる。早々にフィールドに降り立ってスタンバイ状態の音忍と目が合う。やる気満々だ。第二の目的とか言ってたし、何かと思うところがあるんだろう。対する私のモチベーションは急降下。シカマルじゃないけど、めんどくさい。繰り返すけど、身に覚えのない因縁ツラい。ため息をこぼして、私は柵を乗り越えた。白銀は置いてく。たぶん使わないし。そもそも寝てるし。

「では、試合はじめ!」

 瞬き一つ。そのあいだにドスが迫ってきた。腕に装着された武器からチャクラが放たれる。結界を使うほどでもないので、チャクラの爆発で相殺。そのまま高速の回し蹴り。ドスがとっさに腕で防御したのをいいことに、腕の装置を粉砕。

「……っ!」

 大きく後退して、ドスがゆらりとした。しかし攻撃に入るつもりではないらしい。腕を押さえながら低く笑い出す。

「……ずいぶんと体術に長けていますねぇ……やはり、幼少期に血継限界はおろか忍術すら満足に使えなかった影響ですか」

 上のほうから「え?」と困惑の声が聞こえた。いのとかナルトあたりだろうな。なんて考えつつ無言でいると、ドスはさらに言葉を続ける。

「紬一族の忍者としてもっとも落ちこぼれていた君がいまや、あのうちはサスケと並ぶ期待度No.1ルーキーだなんて……とんだ英雄譚だね。失笑ものですよ」

 期待度No.1だったのか私……はじめて聞いた。瞬きしていると、ドスは三日月型に目を細めた。私は反射的に―――

「フブキ様は失笑も通り越して無反応でしたけどね」

 予想外の名前に瞠目する。一瞬のち、とっさにかざした腕にクナイが突き刺さった。床に赤が散る。上方から悲鳴。持ちこたえた私が、ドスの回し蹴りをかわして棍を振るう。

「いやいや、この間合いでそんな長い武器は無意味でしょ」

 クナイを取り出すまえに、耳に違和感。そして唐突に身体のバランスが崩れた。体勢を立て直そうとした矢先、貫かれた。脇腹を。背後から。血が滴る。

「装置を壊せば僕は音を操れないと思い込むなんて、浅はかすぎじゃないですか? 動揺のあまり思考が回っていない、とも言いますが」

 蹴り飛ばされた勢いを利用して間合いを取り、体勢を立て直そうとしたところで、うまく行かずに地面に倒れ込む。間髪入れずに左の肩口にクナイが突き立てられた。右肘は膝で押さえられる。ハハハッ、ドスの口から笑いが漏れた。

「その様子だと知らなかったみたいですね……フブキ様がいま我々の里で忍術の指導をしていらっしゃること。まぁ当然だね、なにせ君は……」

 左肩のクナイをねじってから引き抜き、ドスはそれを振りかぶる。いのたちの叫び声が聞こえた。

「捨てられたんだから!」

 陶器が割れるような音がして、結界で創った分身が消えた。ドスが瞠目。その側頭部を、思い切り殴りつける。雷に性質変化させたチャクラをこめた棍で。

「―――……っ!!!」

 ……やりすぎたかな。壁に激突したドスを見て思った。でも反省はしない。私に何度もクナイを突き立ててくるような人間ですからね。実際には未遂ですけどね。

「攻撃がきれいに決まりすぎることに疑問を持たないなんて、自分の策を過信しすぎじゃないですか? 優越感のあまり思考が回っていない、とも言いますが」

 小首をかしげて問うてみる。聞こえてるのか謎ですけどね。壁に穴が開くほど派手な激突だったし、そのまま失神している可能性も無きにしも非ず。運よく失神していてほしい。終われるから。

「………」

 失神してるんじゃないかな。十秒くらい待ってて思った。ぜんぜん動かないし。変わり身とか幻術でもないっぽいし。ぼんやり考えていると、月光さんが近寄って確認しはじめた。そして立ち上がる。

「勝者、紬イツル!」

 こんな勝ちでいいんですかね。なんとなく不安になりつつも、終わったのはたしかなので、さっさと撤退する。途中で、ふと振り返ってみた。

「……フブキさんの情報、ありがとうございました」

 一応の礼を述べておく。勝ち誇ってしゃべってくれたおかげで意外な情報が手に入った。まさか大蛇丸のところにいるとは思わなかった……。下っ端が持ってる情報なので真偽を確かめる必要はありますけどね。

「……おまえって意外と悪趣味だよな。ヒヤヒヤしたっつの」

 戻って早々シカマルに言われた。

「失敬な。言葉で隙を突こうとしてるなーって想定したから、まんまと動揺して策にはまった感じの演出にしてみただけ。フリに対してはきちんとノるのが礼儀なんだよ知らないの?」

「知らねーよ」

「だよね」

 テキトー言っただけです。シカマルから白銀を受け取ったとき、ポンと頭の上に手が乗った。アスマ先生の手だ。なんだか心配げな目とかち合う。

「……イツル、音のヤツが言ったことだけど、気にしなくていいからな」

「? はい」

 なんでそんなこと言うんだろう。不思議に思いながらもうなずく。アスマ先生はちょっと目を細めたあと「じゃ、最後はチョウジだな」と振り返ったので、追究はできなかった。

想定と意外の予選第十戦
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