塔へ向かう途中、ヤバげな現場に出くわしました。音忍とサクラが戦ってます。ナルトとサスケは気絶中?で、謎のオカッパ緑タイツさんもタイムリーで戦力外に。ちょっとどういう状況か分からない。

 いのたちと小声で緊急作戦会議に入る。「あれ何事?」「サスケとナルトなにやってんだよ、サクラ一人じゃ酷だろ!」「逃げよう! あいつらヤバいって!」けっこう個性が出る発言内容。けど、いのだけ何も言わない。ハラハラと見守ってる。

「おい、どうすんだよ、いの! サクラだいぶヤベーけどいいのかよ?! おまえら昔親友だったんだろ?!」

「! っでもどうしようもないでしょ?! うかつに出てけないじゃない!」

「……イツルはどうすんだよ!」

「いのの決定に従うよ。いのの友情の問題だもの」

 シカマルが矛先を向けてきたけど流した。個人的には助けに入ってもいいんですけどね。でも私が先に決定しちゃうと、いのに言い訳ができてしまう。いのの確固たる意志で決めてもらわないと意味がない。意地っ張りに良い薬だと思うんです。

「!」

 いのが迷ってるあいだに、サクラが髪を切った。わぉと目を丸くする私。いのたちにも衝撃が走る。その隙をついて、サクラは毅然と攻撃に転じる。変わり身の術をうまく使って敵の一人を押さえこみにかかった。あ、敵の腕にかぶりついた。すごい。

「……っ!」

 いのが駆け出した。……やっぱり友だちなんだなぁと感慨を覚えながら、私も続く。シカマルとチョウジの気配もついてくる。「ぐえっ」……チョウジはマフラーでも引っ張られてるんだろうか。シカマルならやりそうだ。

「!!!」

 現場に緊張が走った。いきなり第三者が現れたらそうなりますよね。

「いの……」
「サクラ……アンタには負けないって約束したでしょ! サスケくんの前でアンタばっかりいいカッコはさせないわよ!」

 サクラといのが感動チックな言葉を交わしている。よい友情の表れってことですね。

「……また変なのが出てきたな」

「しかしラッキーとも言えますね。ボクらの第二の目的の登場だよ、ザク、キン……」

 すごい見られてるんですけど気のせいってことでいいですか。なんか不穏なこと言ってるし。まったく身に覚えがない因縁をつけられてるのツラい。こういうフラグうれしくない。返品希望。不可ですかそうですか。

「ねえみんなやめようよー! こいつらヤバすぎるって! シカマル、マフラーはなしてよぉ!」

「はなすかバカ! めんどくせーけどしょーがねぇだろ! いのとイツルが出てくのに男のオレらが逃げれるか!」

「シカマルのそういう男気?けっこう好きだよ。くだらないプライドだとも思うけど」

「褒めてんのかけなしてんのかどっちだよ」

「じゃあ半分ずつで」

「アンタたち緊張感もちなさいよ!」

 いのに怒られた。

「……シカマルのせいだ」

「いやイツルのせいだろ、どう考えても」

「どっちでもいいからマフラーはなしてよぉ! ボクは戦いたくないんだってばー!」

 チョウジ涙目。ちょっと罪悪感。

「……うるさいヤツらですね……」

「イヤなら抜けたっていいんだぜ、おデブちゃん」

 敵が言った。……あーあ、禁句なのに。チョウジが「よく聞き取れなかった」って感じに流そうとしたけど、敵が「イヤなら引っ込んでろっつったんだよ、このデブ!!」と繰り返した。プッツン。キレる音。

「ボクはデブじゃない!! ポッチャリ系だコラ―――!!!」

 目がメラメラして見える。チョウジが怒ったのを見るのは久しぶりだなぁ……なんて思ってると、ビシッと指さされた。

「おまえら分かってるなぁ!! これは木ノ葉と音の戦争だぜぇ!!!」

「イエッサー……って言えばいいの?」

「言わなくていいだろ」

 シカマルがマフラーをはなしながらため息をついた。

「白銀、サクラたちをちゃんと守るんだよ」

 念のためにと白銀を肩の上から降ろし、サクラの横に配置する。白銀はキリッとした顔でうなずいた。頼もしい。出番はなくて済むようがんばるけれど。白銀の頭をポンとして、サクラに軽く手をあげて、それから振り返って構える。

「それじゃ、いのチーム全力でいくわよー! フォーメーション猪鹿蝶プラス!」

 いのの言葉に、ちょっとだけ苦笑。相変わらず微妙なネーミング。でも、これよりマシなのはなかったので仕方がない。私が余分に入ってしまってるからね。仕方ない。……それはさておき。

 チャクラを足に集めて、地面を蹴る。チョウジの肉弾戦車は、威力はあるけどフォローが重要だ。攻撃が決まらなかったとき、敵がフリーになってしまいやすいから。チョウジはすばやく体勢を立て直せないし、ついでに目を回してしまったりもする。

 チョウジの肉弾戦車を避けた音忍へと、間髪入れずに棍を振るう。

「っ?!!」

 音忍が慌てて避けて、すぐに吹っ飛んだ。私の蹴りが決まったから。私の見た目に騙されて、棍にばかり気を取られてはダメなんですよ。

「いの! あとはあの女だけだ!」

 影真似の術で音忍を捉えたシカマルが言った。いのがうなずいて、くノ一へと心転身の術を使った。クナイを構えて、この子の命が惜しかったら去れ的な発言。彼女のチームメイトたちがニヤッと笑う。……ああ、イヤな予感。私は結界を形成した。

「きゃ!」

 音忍が放った衝撃波が結界を揺らす。いのはとっさに目を瞑っていた。内部には衝撃がいかないようにしたから無事だとは思う。たぶん条件反射だ。たぶん。

「……強度、足りなかった?」

「う、ううん。大丈夫。びっくりしただけ」

「だよね」

 とりあえず安心。けど、念のため術は解いてもらった。意識の戻った女は、そのまま結界で閉じ込めておく。

「……フン。それが紬お得意の結界か」

「かろうじて助けてもらったようですが、愚かな小娘ですね……。我々の目的はくだらぬ巻物でもなければ、ルール通り無事この試験を突破することでもない」

「じゃあ帰って」

 消した。いや抹殺とか虐殺とかいう感じではなく、結界でテキトーに転送した。なんか発言の途中っぽかったけど、私には関係ない。だってもう面倒。望まぬ争いはしたくないんです。平和と穏便がいちばん。最初から飛ばしておけばよかった。

「なに一人で一息ついてんだよ、イツル。オレら取り残されてんだけど」

「えー、嘘だ。頭のいいシカマルなら分かってるでしょう」

「そういう問題じゃねーよ! せめて合図出せっつの! いきなり影がブチ切れてびっくりしただろーが!」

「ごめん」

 正直、もう術は解けてると思ってた。シカマルって意外とスタミナ(チャクラ)ないし。っていう言葉は胸の奥にしまっておこう。うるさいから。ブツブツ言うシカマルをテキトーにあしらって、私は踵を返した。とりあえず負傷者の手当てだ。ポカンとしてるチョウジとか、いのとかサクラへの説明もいいよね。割愛ってことで。

 サスケの身体から紫の煙みたいなものが発生してるのは、どう反応して対処したらいいのか教えてほしい。とりあえず軽く封印しておくかな。

連携と強制の援護
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