▼ 01
歌が聞こえる……
満月の夜俺は引かれるように夜の海岸を歩いた。綺麗な美しい歌。その歌声の持ち主を見たかったからだ。岩の上に人影が見える。この声の主だろうか。俺はそっとその人物に近づいた。透き通るような歌声が近づいていく。
「……っ」
近づいていく途中にじゃりっという足音をたててしまい、相手に見つかってしまった。満月の光の逆光で見ずらかったがうっすらと美しい顔立ちそして人ではない魚のような足が見えた。その人物は俺に見つかった後すぐに深い海へと姿を消した。この胸の高鳴りはなんなのだろうか。
この海には人魚がでるという伝説がある。あの美しい声の持ち主は人魚だったのか。もう一度会って確かめたいと思った……
「……ただいま……」
「おかえり凌牙。……どうしたの?」
「人に姿を見られたかもしれねぇ……」
人魚の俺と璃緒。人魚は人に見られてはいけないという掟がある。はっきりと見られていないといいが……
「気にしてたって仕方ないじゃない。はっきり見られたわけじゃないみたいだし大丈夫よ。」
「そうだな……」
俺たちとは違う足、人と人魚は相容れない存在。それはわかっていたのだがもう一度会ってみたいと思う自分がいた。人に興味があるのかもしれない。
(そんなこと出来ないだろうがな……)
俺はそんな気持ちをそっと胸にしまいこんだ。
この出会いがこれから俺達の人生を変えるとは今の俺達は思いもしなかったのだった。
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はじまり
にょたでも凌牙の一人称は俺です
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