ようやくお客の出入りが少なくなったころ、突然店のドアが開いた。
やってきたのは日向くんだ。
体格のせいか隠岐さんには弱いけど、参謀の山城くんと同等の力があると聞いたことがある。

「どうかしたのかい?」

練習が終わって直ぐに来たのか軽く息が乱れている。

「あの…!恋人に自分の思いが伝わる花ってありますか?」

どこかで聞いたことのあるような台詞に戸惑いながらも花を探した。

「日向くんは相手にどんな気持ちをもってるの?」
「誰にも負けないくらい愛してます」

ここまではっきり言えるのは凄いことだと思った。

「それだけ大好きな人なんだね」

その言葉にニッコリと笑みを浮かべる日向くんを見れば、相手が何故彼に惹かれたのかが分かった気がした。

「そんな日向くんにはカーネーションをあげよう。花言葉は純粋な愛情だよ」
「トモさんありがとう!あ…!時間ないから直ぐ行かないと」

花を受け取ると直ぐに日向くんは出て行った。
渡されたお金をレジに戻したころにようやく思い出した。

『恋人に自分の思いが伝わる花ってありますか?』

あの言葉はつい日向くんがくる30分前に来た江戸なまりの口調の人が言った台詞だ。

「もしかしたら…まぁ、いいか」

小さく笑うと次、来るかもしれないお客のために店を片付けた。







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