寄りかかりすぎた存在。


目の前からは全ての色が消え去り


果てしない虚無が全てを蝕む。



私という個人には

本当に何も

何もなかったというのに



与えられてしまった喜び


受け取ってしまった悲しみ




ひとすくいだけの絶望




ただし、私の中の全ては


そのひとすくいしかない。




敷き詰められた絶望、希望、象徴、


午前3時の独り言。






(それでも私は待つわ。)















赤色の皮のトランクはあの人にとてもよく似合っていて、嫌味なまでに、これからの旅の供として素晴らしくふさわしい物なのだとわかった。

大きなトランクに荷物をつめて

革靴のかかとを控えめに打ち鳴らして

ジーンズのポケットからストラップをなびかせて

ススキ色の髪を惜しげもなく輝かせて



彼は、飛んだ。








しばらく会うことはないのでしょう。


でも私は貴方が居なくても決してくじけたりなんかはしません。

だって約束したのでしょう。

帰ってくるって、

彼はそういって微笑んでくれたのだもの。



あぁ、私はこんなにも弱い人間だったのかしらと、思う。

信じられないくらいに弱々しく歩調を緩める。



私は元からひとりきりだった。


そこに国光や貞治が現れ


テニスというものに惹かれ


つきはなされ


暗い部屋の中で


光を見つけた。


皆が居て

一緒に笑って


彼が居て



私は光を受け取ったんだ。


光なんてものはどこにあろうと全てを照らし出してくれると私は信じている。


だから、彼は遠くない。


いつだって近くに居る。





「たった二週間だもの。」





思い切って口にだしてみると、意外にも単純に心がはれていくのがわかる。





(誰かをこんなにも見つめる事は今まで一度もなかったように思う。

清純で純潔な感情かどうかは、わかりはしないけれど。
少なくとも彼のジーンズのポケットからなびいた花冠をかたどるストラップだけは純潔の象徴で在るように思わなくもない。)





*2.天裂く雲雀




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