Silver spoon wars
ふしぎなお茶会、きらめく銀の匙

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 目が覚めたのは午後三時。もう一度寝ようと心がけるが、一度覚醒した脳は再び深い眠りへと誘うことはなくて。そっと一つため息をついて、テーブル脇にあったランタンに灯をともしベランダへ出る。
 庭の梅と早咲きの桜がそっと夜風に吹かれ、ひらりと一片の花弁が手の中に滑り込む。そんなとき隣から声が聞こえ思わず悲鳴をあげそうになる。本当に心臓に悪いからやめてほしい。

  「 ……、桜の花びらって掴むと願いが一つ叶うらしいよ、ただの迷信だろうけど 」

 そんな事をいいながらそっと隣に立つのは同じ紅茶派のリンくんで。対して話したことはないし。気まずくなってそっと夜空へ視線を向ければ雲が満月を隠す、いわいる朧月で。風流があるといえばあるんだけど。なにしろ隣にいるのは男だ。そんなへったくれもあるものか。そんなひねくれたことを考えてても沈黙は続いたままで。そんな沈黙を打ち破るかのように彼は話しかけてくる。

「 ……リルは、なんで、ここに?……いや、なんで起きてるの?って聞いた方がいいか 」

 たどたどしく言葉を紡ぐ彼に思わず緩む口角を必死に隠しながら、手の中に握りしめていた花弁を手放す。

「 寝れなくて、夜風に当たろうと思って……リンくんも同じ? 」


 そう尋ねるとこくりと頷き、そっと彼は桜へと手を伸ばす。

「 あと、今日は月が……綺麗だったから、……桜も、もう少ししたら散っちゃうだろ?……その前に見ておきたくて 」

 そういいながら、振り向き手の中にある花びらを見せつけ、にぃっと笑う彼にこちらも思わず笑みをこぼす。

「 俺、この時間嫌いじゃないかも…… 」

 そう溢した彼に思わずきょとんとしながら、再び視線を夜空に移す。そこには朧月だったはずの月が雲の合間から柔らかな月光が差し込み。ひらりと宙に梅と桜の花弁が舞っていた。

「 アハッ、奇遇だね、おれも、案外嫌いじゃないかもって、思えてきた 」

 だから、どうか、君もこの瞬間を忘れないでいて。








桜の花言葉  忘れないで

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