Silver spoon wars
ふしぎなお茶会、きらめく銀の匙

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文化祭でいちいち騒ぐようなやつらは、馬鹿だ。
 おれらのクラスが文化祭でやることになったのはおばけ屋敷。まあいろいろと手こずったりはしたが、なんとか本番を迎えることができた。ちなみに、ここに来るまで一滴の血も涙も流れずに済んでいる。これは、学校行事における盛り上がり具合において、非常に大切なことだ。
 おれは同じシフトに入ったクラスのやつらを、き、と睨みつける。いや、睨みつけているつもりはないが、まあ多少冷たい視線を送ったのは確かだ。なにかとおれを邪険にしてくる背の高い男ひとりと、気の弱そうなちいせえふたつ結びの女がひとり。特に仲がいいわけではないが、他のシフトや男女比を考慮してるうちにこんなシフトになってしまった。
 さて、おれの役は、客が一番長い直線の直線の終盤に差し掛かったあたりで、釣竿のような棒を利用して顔の高さまでこんにゃくを落とすというものだった。内容自体はきわめてシンプルなのだが、その落とすタイミングや高さにおいて、驚かす側の実力が顕著に現れる。とても重要なポジションなのだ。おイ、くだらねェと思ったそこのおまえ、おばけ屋敷においてこんにゃくがどれだけの価値を持つのか、おまえたちにわかるのかよ、なァ。
 ああ、適当な話をしてるうちに、次の客の足音が近づいてきた。棒を持つ手に力が走る。今か?いや、まだだ。もうすこし、もうすこし___。
 べにゃ、とこんにゃくの音と、客の叫び声が響いた。腕時計でちらりと時間を確認する。11時。おれのシフトは、あと30分も残っている。


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