Silver spoon wars
ふしぎなお茶会、きらめく銀の匙

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「ぱぁさま、これ、かわいいですねぇ」
 そう言うと、ミントはひらひらとメイド服のスカートを揺らす。かわいいフリルのあしらわれたスカートは思いのほかふわふわとしていて、我ながら、上出来だ。
 今年の文化祭、クラスでメイド喫茶を行うことを言い出したのはあたしだった。メイド喫茶って結構盛り上がりそうだし、あたしも一回くらいメイド服とか着たいなあと思ってたら、思いの外みんなノってくれて、今日はとても楽しい1日になるはずだった。
 ところが、今日になって部活の方のシフトに欠員が出てしまった。メイド喫茶の方のシフトはそこそこ余裕があったので、あたしはそっちを優先するしかない。そうして急遽、あたしのシフトを身長も体格もだいたい同じだったミントにやってもらうことになった。ふりふりのメイド服を着て、ミントもなんだか満足そうだ。正直、あたしだってメイド服を着たかったし、そもそもミントがあんまり気にくわないから、若干テンションが下がりつつあるのだけれど。
「でしょう、あたし、スカート一番こだわったんだから」
 ふふん、と得意げに笑ってみせた。ミントはくるくる回ったり跳ねたり、やっぱり上機嫌だ。メイドというより、ご主人様に尻尾を振る忠犬のような雰囲気さえある。
 あたしは最後の仕上げとして、ミントにフリルカチューシャを被せると、接客スペースに向けてぽん、と背中を押した。時刻は11時を回ろうとしている。あたしの吐き出したため息は、文化祭の賑やかさに溶けて、消えた。


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