Silver spoon wars
ふしぎなお茶会、きらめく銀の匙

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「おいおい、まさか来ないなんて言うんじゃねーだろうな」
 今回の演劇で総監督を務める煙羅さんが、パイプ椅子にどかっと座りながら貧乏ゆすりしていた。先程から3秒おきに時計をちらちらと見つめ、明らかにいらいらとした様子だ。
 わたくしたちのクラスが行う演劇「白雪姫」は、この後12時より開催予定だ。最後の文化祭というだけあって、皆様それなりに気合が入っていた。わたくしはなぜだか主役の白雪姫を演じることになり、準備期間から今日に至るまで、かなりハードな生活を送ってきていた。
 さて、先ほども言った通り、わたくしたちの演劇は12時から開催される。現在の時刻は11時、1時間前だ。だというのに、肝心の王子様役であるリクさんが現れない、という不測の事態に見舞われていた。あまり空気を読むのが得意でないわたくしでも、この場の空気がぴりっと張り詰めているのがわかる。
「おい悠陽、ほんとにリクと連絡つかーねのかよ」
「うるせーな、今やってるって」
 視線の端で、煙羅さんが脚本担当の悠陽さんの背中をばしばし叩いてるのが見える。悠陽さんは気だるげに視線とスマホを動かしているところだ。煙羅さんは今回の演劇の総監督で現役演劇部員ということもあり、この文化祭にかける情熱は人一倍暑苦しい。
 がやがやとした雰囲気を知らんぷりしながら、わたくしはぐっと伸びをした。本番まで、あと一時間。


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