Silver spoon wars
ふしぎなお茶会、きらめく銀の匙

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 ふわあ、欠伸が狭い空間に響く。は、いけないいけない。慌てて口を閉じた。
 わたしが担当しているおばけ役…お菊さんは井戸の中で待機している。そこでゆっくり声を響かせて顔を出すのだが、どうも井戸の中が心地良い。ぴったりのサイズだしほんのり暖かくて暗いし…、と寝るには丁度いい条件が揃っている。
 なんだか寝てしまいそうだ…なんて目を瞑りそうになったとき、ふと外から半泣きで騒ぐ女の人の声が聞こえた。もうやだ、と呟く彼女たちに申し訳ない気持ちになるけれど、わたしはおばけなのだ。悪いけれどしっかりおどかさなければならない。
  「……い、いちまぁい…にまぁい…」
 最初はひっそり静かな声で。じんわり恐怖を煽らせるにはまずこの方法がいちばん有効だと思う。だから噛んじゃったのは聞こえてない、はず。なに、と不安げに呟く声にまた調子良く言葉を続けていった。
  「ごまぁい…ろくまぁい…」 
 順調に皿の数を数え、次第に声量を上げていく。客からはもうはっきりとわたしの声が聞こえているはず。わたしの役は中盤あたりだから、ウェルさんの最初のおどかしで充分に怯えているだろう。もう何回と繰り返されたこのおどかしだけど、やっぱり未だに慣れないみたいだ。緊張と焦りでお皿が滑り落ちそう。
  「…はちまぁい…きゅうまぁい…」
 最後の皿を足元にかしゃんと落とす。あと一枚、自らのミスで皿を無くしてしまったお菊さんは嘆くように手を伸ばし叫ぶのだ。…そう、
  「____一枚足りなぁい…!」
 こんな風に、血だらけの顔で。
 ぎゃああ、と叫んで走り去っていく客を見送れば、安心したようにまた井戸の中へと戻っていった。 



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