Silver spoon wars
ふしぎなお茶会、きらめく銀の匙

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  「いらっしゃいませですよう、ごしゅじんさま」
 にんまりといつものように笑って客を出迎える。何名様ですかあ、こちらの席をどうぞ、とテンプレートな返答をしては適当に空いている席へ案内した。
 といってもちゃんと配分は考えている。一人二人なら小さな席へ、三人以上なら大きめの席へ。
  「ええ、いらっしゃいませもおかえりなさいませも変わらないですよう〜〜…」
 ぐっと押せば倒れてしまいそうな障壁越しに、同じクラスの子に声を掛けられる。内容は至って誰も気にしないような言葉の違い。別に客はそんなことを気にしないだろうし、みんと達だってそんなことにいちいち気にはかけていないのに。けれどその子はどうも気が入っているのだろう、ふんすと興奮したように違いについて語り出した。ううん、みんと長い話は苦手です。
 話もそのままに分かりましたよう、と返せばそそくさとお冷を手にその場を離れた。その子は話したりなかったようだけど、もう、と呆れたように自分の仕事に就いた。
  「お水失礼しますねえ〜〜、ご注文が決まり次第みんとや他のメイドをお呼びくださ___…」
 ふいに、ぐっと心臓が高鳴った。それは治まることなく鳴り続け、妙な不安を煽る。それを感知すると同時に乱雑にメイド喫茶の入口が開かれた。見てわかる通りの、悪い人。一人はわざとらしくガムを噛んで、もう一人はフードを被って見えないけれど、二人ともにたにたと気味悪い笑みを浮かべていた。
 明らかガラの悪い人たちを不安げに見つめてひそひそと端に寄るメイド達。自ら声をかけるのは怖いようで、ぼうと突っ立ったままのみんとにみんな視線を向けた。
  「……おかえりなさいませ、ご主人様」
 ぱたたと駆け寄り、いつも通り向けた笑顔には少しだけ緊張が滲んでいた。



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