Silver spoon wars
ふしぎなお茶会、きらめく銀の匙

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  「暇だな」
 幾度となく繰り返していた言葉はとうとう現実に吐き出されてしまった。それはざわめきの中に溶け込んで消える___なんてことはなく、だだっ広い教室にほんのり響いていた。それに何を思ったか、ぐわんと顔を上げたレイが、ぷんと怒った素振りで頬を膨らませる。…潰したら怒るかな、なんて馬鹿な考えはレイのシャーペンに潰された。
  「それ言っちゃ終わりじゃん、くーちゃんのばか! せっかくるんるんってする新しい看板書いてたのに」
 ぐりぐり、と押し付けられるシャーペンに押される俺の頬がずきずきと痛む。反論しようにも余計めり込みそうだし口に滑り込んでくるのも嫌で、渋々口は閉じたまま。けれど少し興味を引いた、「看板」の言葉は見逃さない。ちらりと視線だけレイの机に向ければ、言葉通りダンボールに何かしら書き込まれていた。
 まだ下書き段階なのだろう、正直読めない。…いや、汚いとかではなくて、ダンボールのあの茶色にシャーペンの黒だから見にくい。てか本人は後から見て分かんのかよ。やっぱ変わってんな。
  「それ、なんて書いてんだよ?」
  「えー? うーん…出来てからのお楽しみっ、適当に予想しててよ」
 それでも内容が結構気になって、やっとシャーペンを掴んで動きを止めると問いかけた。その問にぱちりと瞬きをしたレイは、むふふと意地悪そうに目を細める。うわ、嫌な顔。
  「なに、最後に星が降ってくるぜ、とかそういうの?」
  「あはっ、なにそれくーちゃん乙女! それもるるんってするけど違うかな〜」
 あは、と揶揄うような笑みでノンノンと指を右往左往。なんだかそれがいやに鼻についた。そんなのも分かんねーの?って言われてるような感じが、勝手にだけどして。むす、と眉を顰めたオレを見てまた笑ったレイはシャーペンを二回ほどまわした。それからまたオレを見て、ぽつりと呟いた。
  「くーちゃんの答え、楽しみだなあ」
 大人にもなりきれない高校二年生のオレは出し物の途中なのも忘れ、その挑発に乗るようにぐるぐると思考を回し始めた。



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