Silver spoon wars
ふしぎなお茶会、きらめく銀の匙
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ビューラーできゅっと挟むと、ミントの長い睫毛は素直にくるっと上を向いた。ミントは不思議そうに目をぱちぱちさせる。その可愛らしい表情に、暫し見惚れた。
今朝廊下で会った時の彼女は、なんだか緊張した表情で手をぎゅっと握りしめていた。どうしたのかと聞くと、これから好きな人と二人でお出かけに行くのだと顔を赤くして言った。その様子がなんだか可愛かったから、あたしはあんなことを言ったのかもしれない。もしくは、ただ煤のついた汚れた白衣とか、ぴょんと跳ねた髪が、デートには相応しくないなんて、そう思っただけなのかもしれない。とにかく、あの瞬間はあたしにとって決定的な失恋だった。なのに、あたしの気持ちとは矛盾した言葉がすんなりでできたのは、本当だ。
「 じゃあ、かわいくしてあげる 」
ミントを自分の部屋に連れてきたあたしは、早速ミントをかわいくする作業に熱中した。自分の持ってる洋服を引っ張り出して、何パターンかミントに着させる。あたしとミントとは、そこまで身長差はないから服のサイズだって大体一緒だ。着ていく服が決まると、あたしはミントの髪をアイロンでくるくる巻いて、メイクをして、まあとにかく忙しかった。
でも、そこはさすがあたし。ミントはみるみるかわいくなっていく ( いや、もともととてもかわいいのだけれど ) 。チークを入れたからいつもより血色がいいし、フリルだってよく似合っている。あたし、こういう仕事とか意外と向いてるんじゃないかしら。ほら、だってミントだって満足そう。
そうして、んふふ、とミントを上から下まで眺めて、気づいたら、そんなかわいいかわいいミントのおでこにキス、なんてしていた。ミントはすこし視線の高いあたしの顔を見上げて、やはりきょとんとしていた。
「 ぱぁさま、今のはなんですか〜? 」
あたしは自分の口に人差し指を当てる。
「 今のはね、かわいくなれるおまじないよ」