クザトが、死んだ。別に血を流して横たわっていたわけでも首を吊っていたわけでもない。ただ、リビングのソファに座って、ただ眠っていた。
 その時俺はクザトに声をかけてやろうと、そっと近付いて、手を伸ばしたんだ。けれど何故かひんやりとした空気がまとわりついて、思わず手を引っこめた。それから顔を覗き込んだが、ただ寝てるだけだと思ってた。もう一度手を伸ばした。何故かその手は震えていたけれど、そのまま唇に触れた。乾燥していて、冷たい。

 「手入れくらい、しとけっつったろ」

 初めて零れた言葉はとても震えていた。真冬でもないのに、吐息が白く目に見えたような気がする。
 今度はオレンジ色の髪に手を伸ばした。どことなくしんなりしている気がする。いつもはツンとしているのに。

 「──クザト、クザト。…大丈夫だから、な」

 いつの間にか、俺はあいつの頭を抱くように引き寄せて抱きしめていた。それこそ小さなガキを抱きしめるように、きつく、頭まで撫でて。そっと耳元に唇を寄せて、囁いた。大丈夫だ、と。何を思ってそんなことを言ったのか、今となれば何も分からない。なぜそんな言葉が出たのかも。
 けれど、あいつは寂しがり屋だから。なんだかんだでいつも俺にひっつくような、そんな奴だから。きっと一人で寂しい、シャロさん、なんて泣いてる気がする。…なんて。

 「やっぱガキのまんまだな、お前も、俺も」

 大丈夫だ、クザト。もう一度だけそう言って、小さなテーブルに置かれたカップに口を付けた。




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