正直に言うと、あたしはお姉ちゃんが嫌いだ。
誰にも媚びることなくて、尚且つ自分勝手。笑うこともなく言葉に気をつけることもなく人を傷つけては静かに去っていくあの人が昔から嫌いだった。それなのになんでか親には好かれて、さ。それだけであたしに居場所はもう無いわけで。
──なのに。
「寧ちゃん、……ここに居たのですか」
こうやって、あたしが居なくなるとすぐに迎えに来るところ。いっつも空気なんて読めてないくせに、なんで、いつも。
「…なんで、来たの」
「そりゃあ妹が居なくなったら心配しますから。毎回毎回抜け出さないでください」
ぺちりと軽く頭を叩かれる感覚。じろりと嫌悪を隠すことなく見上げれば、ふうと溜息をつかれた。ムカつく。
あからさまに触られた部分をはらっていれば、すいとお姉ちゃんの髪が揺れた。
「帰りますよ」
「…やだ」
「やだじゃないです。…館の人達、みんな貴方を待っていましたよ」
ばち、と俯いてた瞳が開かれる。そんな、嘘。あたしを待ってたってそんな訳が無いのに、そう思っていてもやっぱり心のどこかは期待して、嬉しくて。思わずお姉ちゃんに目線を合わせていた。
「お菓子、抹茶味にするそうです。けれどどのくらい入れたらいいのか分からないそうで…貴方に、聞きたいそうですよ」
心臓が大きく呼吸するように身体が震えた。また調子のいいこと言って、なんて思ったけど、やっぱりあたしにはそんな言葉がとても魅力的で。
じんわりと広がる、お姉ちゃんの笑顔。きっとそれがわかるのは、あたしだけ。
「……ほら、帰らないのですか?」
お姉ちゃんなんてだいきらい。