過去






はじまり
< 館について >
 館は基本的に街から離れた森の更にずっと奥深くに存在している。そのような噂も流れてるとか。館は地図上のどこにも存在はなく、選ばれた者の前にだけ姿を現す。主が許可しない限り館の外へ行くことは不可能。買い物や遊びに行く外出は可能である。

< 入館方法 >
 人生を投げうるほどの苦痛を伴う経験をした者だけが館を認識することができる。その上で主と対面し、館に住まわせても良いと許可をもらえた人だけが擬人化となれる。なので擬人化になれず帰った者や、そもそもの館を認識することもできなかった者もいる。その者に対しての主の対応のほどは誰も知らない。
 擬人化元は館に来てはじめて口にしたものになる。それらは主に指定されるのではなく、本人が選んでよいものとなる。






ウェル

 どこかの国の金持ちの息子。昔から色々な経験を積まされて飽き飽きしてきた頃、初めて自らの意思で行動を起こし、脱走。ろくな動き方も分からないせいで服はぼろぼろ、お腹も空いた。早速野垂れ死にそうになったときに迷い込んだ館で主さまと出会い、その優しさに触れる。この人にならば、そう感じた彼は自ら志願して主に仕える者となった。
 プリンス・オブ・ウェールズを選んだ理由は単純、入れ物が気品溢れるもので一番見覚えがあったから。それが館で初めて口にしたものとなり、プリンス・オブ・ウェールズの擬人化となる。主の淹れた紅茶を飲んだとき、涙を流したとか流してないとか。名は主の命名、君に一番合うだろうと言われたこの名は永遠の宝物。



オペラ

 ××××××××××××



クザト

 愛情表現がまっすぐで純粋な子。幼い頃から誰にでも愛情深く、誰にでも素直に接していた。だが、それをよく思わない者も当然いて。少しばかり悪戯な少年に「お前なんか嫌いだ」と言われ、自分の心をさらけ出すことはいけないことだと間違って悟ってしまう。
 それからは今の彼のように天邪鬼な言葉ばかり。それなのに青年期になると、今度は「お前の本心は何処にあるんだよ」との言葉。もうどうしようも無くなって、ぼう、と歩いていた先でたどり着いたのはあの館。不思議な雰囲気を漂わせる主さまには全てを話し、擬人化として受け入れてもらうことに。
 彼が最初に口に含んだのは角砂糖。初めて目にしたそれが気になって、ぺろりと舐めてしまったらしい。そして角砂糖が擬人化元となった。名は自ら志願。彼の性格を全て見透かした主さまは旧名のままでもと告げたが、彼から全てを捨てたいとのことで新たに命名。未だに全て捨てられた訳ではないようだが、本人は満足しているようだ。



ミント

 



シンイ

 ただの平凡な男の子。勉強も運動も一生懸命に取り組んでいた。けれど両親は共働き、あまりの忙しさから彼を放置してしまうように。分かっていたといえ彼もまだ子供、寂しさから必死にトップを目指し、表彰など褒められるものを狙うように。勉強や運動は元から取り組んでいた為、簡単に一位になれたものの両親は相も変わらず放置。とうとう母親に縋りついて寂しいと嘆く。けれど仕事のストレス等も溜まっていたのか、苛立ちを止められなかった母親は彼を叩いてしまう。その後直ぐに我に返り謝るもののもう後の祭り、自分は邪魔なんだと思い込んだ彼は家から飛び出して行ってしまった。
 それからは柄の悪い連中とつるんで過ごすように。幸い悪事には手を染めなかったものの、その間に髪色も口調変わり、ピアスまで開け出すように。そうして過ごして数年、未だつるんでいた連中と歩いていたらふと迷子になってしまう。すぐに彼らを探し始めるも一切見つからない。ふと過去の事がフラッシュバックして、また捨てられたんだと心を閉ざしてしまう。
 そしてもう投げやりに進んでいくと、あの館へ辿り着く。そこで出会った主さまに迎え入れられ、どうでも良い事のように今までの出来事を話せば、突如主さまに抱きしめられる。流石に驚きを隠せず嫌だと離れようとするけれど、それでも離れず抱き締めて撫でられて。久方振りの人の暖かさに思わず泣き崩れてしまい。その後泣き疲れ寝落ちた彼は館に住まうこととなり、料理下手な誰かが作ったニシンパイを食べたことによりニシンパイの擬人化となる。
 彼が未だ暴力を振るうのは自分を見て意識して存在を知っていて欲しいから。度々ピアスが増えるのは過去を忘れまた裏切られる、なんてことをされたくないから。触れられるのが苦手なのは元々擽ったがりなのもあるが、主さまとの出会いを思い出すから、という理由もあるんだそう。



シーク

 



バン

 



ディール

 幼き頃に芽生えた正義感に従い、成人してからは警官へと就職し、順調に階級を上り詰めていく。まあ、正義を全うしたいだけの彼には階級なんてものは興味なかったのだが。…けれど、当然それを良く思わない人物もいるもので。
 ──警官になって数年。地味で陰湿な嫌がらせが続いて鬱憤も溜まってきた頃、ふと部下が話し声が。内容は自身への愚痴、嫌がらせも彼等の仕業である事も分かると中へ乗り込んで注意を始めた。彼等も当然素直に聞く訳がなく「正義なんて今時だせえこと言ってんじゃねえよ!」なんて言われたら黙っていられなかった。
 彼にとって正義は自分自身とも言えるものであり、それを否定することは自分自身を否定するようなもの。言葉も出ず、思わず相手の首に手をかけてしまう。脱力した相手に気付き慌てて離すも既に息はなくて。悪に手を染めた自分が信じられず、すぐにその場から逃げ出した。
 気づいた頃には森の奥、どこかも分からない場所で出会ったのが主さまである。気が動転していたのか今までの出来事を全部話してしまうも全てを受け入れてくれる主さま。そして誘われる儘に館へと踏み込み、ディンブラの擬人化へと変貌する。



リムナ

 



シスイ

 



ローテ

 





 



キュー

 とある宗教に入信していた親の元で生まれた子。宗教自体は過激ではなかったものの、入信してからたった一週間、たった一週間少し物事がスムーズに進んだだけで神様のおかげだと信じるようになってしまう。元々純粋な親だから仕方がなかったのかもしれない、。
 けれど、次の日から日常は一変した。食事は肉も魚もないベジタリアンになり、1日5回は繰り返される祈り、服装は白一色になったりと神への信仰を更に深めていた。勿論幼子の彼は嫌がり反抗もしたが、その度に行われた暴力に怯え、次第に抵抗も無くなった。そんな彼も神を信じた、と思い込んだのか親も彼に話しかけることは無くなる。
 そんな中、彼は風邪を引いた。38℃の高熱に魘され、気持ちも不安に満たされた彼は親に手を伸ばす。…けれど、一向に振り向かない。神に祈りを捧げる親は彼に一切目もくれず、彼が触れれば突き飛ばして叱る始末。子供ながらに(もう、ダメだ)と悟った。そのまま祈りを捧げている間に外へと飛び出した。
 熱のある子供が何処までも走れるわけもなく、細道で倒れてしまった所を主さまに拾われた。完治するまで面倒は見て貰えたものの、主さまは自ら彼が来ていないので帰る場所があると思い、寝ている間に元の場所へと返していた。
 けれど彼はもうあの家にも何処にも帰る場所はなく、ヒモのように通りすがりの人にご飯を奢って貰ったりゴミを漁ったりとなんとか凌いでいたが、一週間も持つ訳がなくて。食料を求め彷徨い歩いているうちに、主さまの住む館へ「自ら」入り込んでいた。



瑠璃

 



ライ

 彼は、とある宗教の教祖の子供として生を受けた。皆喜びはしたが、それもただ生誕を祝うだけではない。天から教祖という身体を伝い、神からのお告げを皆に伝えるため産まれたのだと崇める形で祝われていた。当然「神の子」を傷つけたり穢すことは許されない。厳重に、慎重に、やさしくやさしく育てられていた。神からいただいたものなのだから。誰も彼自身を見ていなかった。
 大きくなってからは毎日対話を求められ、神の子を強要される。まいにちまいにち求められるばかり。何を言ったって、何を求めたって、上っ面だけだ。つらかった。やめたかった。逃げたかった。けれど教養もろくに受けていない僕には打開策すらも思い浮かばなくて。
 そんなある日、神の子に一目お会いしたいという者が現れる。その者は偉い方なのか、少し大人と話をした後、簡単に彼と2人きりになった。その者は口先の話も聞かず、「外に出たいか」と聞いた。
 初めて顔を上げて見たその者は笑っていた。
 「君は神の子じゃない。ただの人間から産まれた人間だ。私には分かるよ、君の気持ちが」
 口を挟む間もなく、その者は言葉を連ねる。
 「君は良い子だ、頑張りすぎたんだ。この世は君が思ってる以上に正しく進む者なんていないよ。君はもう少し…__そうだな、「嘘」でも覚えてみるといい」
 そう告げられた言葉に頭がぐらりと傾く。全ての思考が混ざる。ぐちゃぐちゃな黒に染まる。
 「……大丈夫、すべてを嘘にする必要はない。ほんの少しだけ、赤を紫に、0%を1%に。少しだけ悪い子になれば、君は自由だ。その時は私が君を迎えに来ると約束しよう」
 「…ふむ、「嘘」をつくにも初めてなら難しいか。どれ、手始めに私と一緒にひとつ、「嘘」をついてみようか」
 「名前でも考えてみよう。…ふむ、そうだな…」


「 君の名前は [嘘] だ 」







コォズ

 



キリネ

 



ラプス

 



メメリ

 大人しく無口だが歌が大好きだった女の子。両親が歌関連の仕事をしていて彼女にも歌を教えていたそう。そのおかげか幼少期からうたを歌うようになる。プロから教えられていたこともありめきめき上達していき、学校での音楽の授業はいつも一番。うただけが彼女にとっての唯一。
 …けれど、いつも大人しく弱々しい彼女が一番にいる事を同級生は良く思わなかった。いつの日かの学芸会、彼女のクラスは合唱をする事になっていて、そして一部分は彼女がソロでうたう事になっていた。そんな中、本番前に配られた飲み物を飲んでから何かがおかしい。喉の不調を感じるものの、自身の役割もあって何も言わず本番へ。うたが流れ、彼女が一人うたう時、しんと当たりが静まり返った。声が出ない。息の流れる音しか出せず、飲み物を渡してきた同級生を見ればしてやったりな顔。全ては妬みから仕組まれていたこと、そう理解した途端、彼女はその場から逃げ出した。泣きながら彷徨い歩いた先に辿り着いたのは大きな館。そこで出会った主さまに話しかけられるものの、声も出せずただ涙を零すだけ。それを見た主さまはただ優しく迎え入れ、手持ちにあったキャラメルをくれた。
 それからは少しずつ声が出せるようになる為に練習を重ねているらしい。いつかまたうたを歌いたい、それだけを求めて。



ティージィ

 



ネイレン

 



ロシュ

 



ジュリ

 





 



シエン

 



チカ

 



メア

 



トロワ

 



トワレ

 



ドール

 



夜十

 



みまち

 



クノー

 



コヨーテ

 とある国の金持ちの息子。…の、分家の子。コヨーテはコォズが生まれ育った本家の分家に生まれ育つ。
 コォズは才能はあるものの、気分にムラがありウェルと出会ったことによりそちらに意識が向いてしまう。それにより、元々やる気のなかった跡継ぎ問題に拍車がかかり、家を飛び出してしまう。
 一方コヨーテは幼い頃から地頭が良く、コォズよりも出来は良かったからか、見向きもされなかった分家が少しずつ名を挙げ出していく。コォズが家を出たことにより、コヨーテを跡継ぎにしてはどうかと話があがる。それに家族は大層喜んだ。コヨーテは自らの目のこともあり、なにか返したいと思っていたこともあって、尚のこと喜んでいた。
 しかし、話し合いの結果コヨーテが跡継ぎになる道は潰された。能力は良くともやはり容姿のことが良くなかったらしい、取り下げられるどころか彼の存在が不吉なのではと今まで以上に分家が下げられることに。家族は実力で見返そうと励ましてくれるものの、自分のせいでと責めてしまう。自分がいるせいで、自分がいるから家族が傷ついている。そう思う気持ちは止まらず、靴も履かずに夜中にそっと家を出てしまう。行く宛も金も目的も何もなかったが、とにかく家から出たかった。家族の疫病神になりたくなかった。
 そうして歩いていると、ふと人気のないところに迷い込んだことに気づく。やたらと静かで真っ暗なそこが恐ろしく、慌てて引き返すも出口は見当たらない。どれだけ走り回っても、叫んでも、逃げられない。出られない。木の幹か石か、何かにつまづいて転ぶ。膝や腕から、じくじくと痛みが溢れ出す。我慢の限界だった。わああ、と声を上げて泣きじゃくる。…何分泣いたのだろうか、泣きも収まりしゃくりあげるようになったころ、ふと体が暖かく包まれていることに気づく。はたと横を見れば体が浮いているようで、感覚が遅れて抱き上げられていると伝えてくる。はっと顔をあげれば、優しく微笑む瞳がコヨーテを貫く。その瞬間、もう逃げられないのだ、と子供ながらに悟ったのだ。


「そんなに泣いたら悪い狼が寄ってきてしまうよ」



ろりぽぷ

 



カラン

 



ステラ

 





 



ティック

 



コウ

 



羽津

 



エレクサ

 



千耶

 



キーフ

 



ハニー

 



みるち

 



千波

 



ナナバ

 



華條扇狗

 








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