ぢうっと一際つよく吸い込まれた感覚に、身体が一度だけ震えた。あつい吐息が肩にのしかかる。傷口から鼓動が逃げていくと錯覚してしまうほどの熱が一点に集まる。オレはどうすることもできず、段々と顔を上げていくアイツの顔を眺める。
「ねえ、最近ちゃんとごはん食べてる?なんか味うすいよー」
舌先で唇を舐めた女の第一声に自然と眉を顰めた。実際に寄ってるかは知らないが、できるだけ不快感を顕にしようと顔に力を入れてみる。…余計傷口が傷んだ気がした。クソが。
「──あ、ごめん、結構痕残っちゃったかも。きすまーくみたいになってる〜」
そんなオレを知ってか知らずか、じろりとオレを一瞥したアイツは未だ傷口が残る肩を一撫でする。「ッあ"」
ズキズキズキッ。まるで電流が走るかのような痛み。神経が逆立つのを感じる。は、はあ、と息が荒くなる。それでもアイツは目もくれず、その上最悪な言葉を残した。オレは返事する余裕もなくて、縋るようにアイツのスカートを掴む。
「__…く、そかよ、おまえ、ただでさえいてェ、のに」
微かに絞り出すような、憎悪と恨みが籠った聞くに絶えない声が出た。過去一最悪な声かもしんねえ。はあ、と浅い呼吸を繰り返す。それでもやっぱりアイツはなんてことない顔で「ごめんごめん」と笑って呟いただけで。
あー、オレ、どこで間違ったンだろう。イラついて尚、思い通りに動けない自分に腹が立つ。言葉もろくに発せない自分が許せなくて。
でも、それ以上に。
それ以上に、アイツがオレの血を求めてくることが 嬉しい だとか。そんなことを確かに感じているオレが、一番嫌いだ。