__ 前略、今私は買い出しに出ています。時折回ってくる役割で、面倒だと思われる方も多いようですが、私自身はそこまで苦にしたことはありません。こういうことも必要だと思います。…けど、毎回ペアの方がいなくなってしまわれるのは些か困りますね。ランダムではないのでしょうか。今日は、どなたでしたっけ…。
少し眉を顰めたシスイが館を出、一切の迷いなく街へと向かっている。かつりかつりと足音が響く。彼女にとっては、きっとすべきことは変わらないのだろう。暫く経つと目標の場所が見えてくる。それなりに大きな街。その分人混みも多いが、大抵の物はここで揃うので、基本的には買い出しには便利な場所とされている。シスイはしまっていたメモを取り出すとさっと目を通す。
「 …何故、よりにもよって 」
不思議そうな声と共に一瞬、歩みが止まる。目を細めてもう一度視線がメモへといく。首をやや傾げながら再度読み返す。『 砂糖 いつものやつ 二袋 』。歩き出しながら、思考を巡らせる。砂糖は昨日、誰かがお菓子を作っていた。あの時はかなり、多く残っていたように記憶していた。訝しげな表情がすぅと瞳に映る。一体どれだけ使ったのだろうか。まさかひっくり返したのだろうか。京飴の彼女は今朝は見受けていなかったけれど。それに、『いつもの砂糖』の店舗は街の一番奥だ。勿論行ったこともある。これは、当分歩かなければならないだろう。…だが、シスイはふるりと首を振る。一番目にこれが書いてあるなら、これを買いに行かなければ。かつかつと一歩ずつ歩を進める。
▽ ▲ ▽
「 はい、ありがと〜ございました〜 」
「 いえ、こちらこそ 」
砂糖を手に入れ店から出てくる人影。言わずもがな、シスイ。メモを片手に見ながら一直線に次の店舗へと向かう。それが今、彼女のすべきことだから。真っ直ぐ、ただ真っ直ぐ前だけを見据えて。
だから気づかなかった。