みつあみの魔法


 みんとの保健室で、みんとはぱぁさまに髪をみつあみにしてもらっていました。今日の戦争でぱぁさまが怪我をしてしまって、みんとが手当てをしたお礼に、ぱぁさまがみつあみをしてあげると言ってくださったのです。
「はい、できた〜」
 ぱぁさまはうきうきした声で手鏡を差し出してくれました。先ほどまではふたつにくくっていただけなのに、ぱぁさまの手鏡に映っているみんとの髪は、キュートなふたつのみつあみになっていました。しかもただのみつあみではなくて、サイドの方の髪は編み込んでくれています。ものの数分でこれをやってしまうなんて、さすがぱぁさまとしか言いようがありません。
「かわいい!!ぱぁさま、ありがとうございます〜〜」
 ぱぁさまも「いいのいいの」とにこにこ笑ってくれました。
「じゃーお暇するね、ばいばい」
 みんとが手鏡を返すとぱぁさまはそう言って、手を振って保健室を出て行きました。

 お風呂に入る準備をするまで、ぱぁさまがやってくださったみつあみは解きませんでした。だってとてもかわいかったんです。びっぐなみーさまとか、和風なひーさまとかに褒めてもらったし、いつになくるんるんでした。みつあみにしただけで世界にこうもうきうきしてしまうとは。
 ぱぁさまのみつあみと過ごした半日は楽しく、名残惜しかったですが、みんとは鏡の前で髪ゴムを外しました。そうすると鏡に、みつあみの跡が残ってうねうねとウェーブした髪のみんとが映ったのです。
 これはみんとなのでしょうか。鏡が見せているのはみんとなのでしょうか。
 みんとが鏡に手を伸ばしてみると、うねうねの髪のみんとも同じように手を伸ばしてきました。やはりみんとです。ぱぁさまの手の魔法にかかったみんとでした。
 みんとは生まれて初めて、髪を洗うべきか迷いました。せっかくかけてくださった魔法を水にぬらして解いてしまってもいいものなのでしょうか?うねうねの髪をそっと、撫でました。うねうねしたさわり心地で、みんとの頭の中もうねうねしてきました。
 結局髪は、洗えませんでした。その夜は、やけにぱきっと乾いているのにうねうねしている髪と一緒に寝ました。

 朝起きるとまだ髪はうねうねで、魔法はまだ解けていませんでした。髪を洗わなかったのがばれるとなんだか嫌だったので自分でみつあみにしようと思ったのですが、みんとにはうまくできず、結局うねうねの髪をいつもどおりふたつに結いました。
 うねうねのまま食堂へ向かうと、なんと、うねうねの髪のひとがもうひとりいました。ぱぁさまです。いつもぱぁさまはツインテールですが、うねうねの髪を下ろしていました。なんだか色っぽい、ような、気がしなくもないです。
 ぱぁさまの席のお隣には誰もいなかったので、みんとはぱぁさまに断ってそこにお邪魔しました。
「ぱぁさま、今日は髪、うねうねなんですね」
「昨日みつあみ作って寝て、パーマっぽくしようと思って」
「なるほど〜〜」
「あと、ミントとおそろいになるかなーって」
 その言葉に、え、とみんとは皿のロールパンを取ろうとしていた手を止めました。横を見ると、ゆるくうねったミルクティー色の髪が頬にかかったぱぁさまのお顔が、微笑みながらみんとを見ていました。
「うねうね、だいじにしてくれたんだ」
 に、とぱぁさまの血色のいいくちびるの端が上がって、じゅっと髪があつくなったような心地がしました。窓からの朝日のせい、ということに、しておきましょう。ぱぁさまの魔法の効き目というのは抜群、なようです。


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