Silver spoon wars
ふしぎなお茶会、きらめく銀の匙

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 わたしの両親はね、とても熱心なキリスト教徒だったの。だから小さい頃から、神様への祈りとか、イエス様の存在が身近だった。
 でも、小さい頃のわたしはそういう物への理解が及ばないところがあって――まあ、純心といえば純心だったのかもしれないけれど、今覚えばただの馬鹿よ――神様って本当にいるのかって、親に聞いたのよね。神様って目に見えるものだと思ってたんだけれど、この目で見たことがなかったから、ぽんっと、疑問に思って。そしたら父に一度だけぶたれたわ。親に手をあげられたなんてあれ一度きりだったけれど、未だに覚えてる。その時くらいから、わたし、いっとき、神様のことが信じられなくなったの。ぶたれるのがこわかっんだっけ。その理由はあまり覚えてないし、当時もわかってたのかよくわからないけれど。でも、親の前でお祈りをすっぽかすなんて出来ないから、ちゃんと教会には通ってたの。
 そんな、なんとなく親の真似事をする日々が続いてたんだけれど、五年くらい前、かしら。ええ、五年前。休日、家族で知人のブルーベリー農園に遊びに行った帰りに、交通事故に遭ったの。ひどい事故。わたしたちの乗っていた車は大破したし、でもそのとき、初めて神様が本当にいるって本当にわかったの。事故の衝撃で意識が朦朧としてる中で、わたし、まだ生きたいって願った。それでなんだかんだ――今、わたし、生きてるの。わたしは運よく、と言っていいかわからないけれど、家族の身体がクッションになって死ななかった。
 でも家族は死んでしまったわ。即死、だって。家族を助けてなんて願ってなかったから、かな。でも、それって、神様はいつでもわたしのことを見てるってことじゃない。「わたしは生きたい」と願ったら、その言葉を過不足なくとらえて、家族の中でわたしだけを生かした。神様は本当にいる。いつもすぐそばにいる。わたしはそこで実感したの。
 だからもう、神様はいないなんて思わない。神様はいるわ。すぐそこに。

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 アイリがあつくキリスト教を信仰するようになったのは、5年前の交通事故がきっかけだったということですね。それから、聖性を目指すため人々を愛する職業・アイドルを志すようになるのです。家族をなくしてからは親戚の家を転々としていたようですが、アイドルになってしばらくして館へ来て、今は親戚とは年末に葉書を送るくらいの仲だそうです。



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