あまあま


「あまいやろお、それ」
 にこりと、女の人は、わらった。めめりはうつむいた。このひとは大体いつもにこにこしている。にこにこしている人は、すき。でも、このひとが、とってもこわくおこっているところを見たことがある。めめりはぎゅうとあめの包み紙をにぎりしめた。きりきり、きゅいきゅい、いやな音をたてながら、包み紙はちっちゃくなってしまう。めめりが口の中でべろの下におしつけている、この、あめみたいに。
「キャラメルとどっちがあまいんやろなあ〜、メメリちゃんはどっちやと思う?」
 女の人はかがんで、めめりと目線を合わせてくれている。この人も、あめをなめている。しゃべるたびにからりころりと音がする。
 めめりの口の中の、この女の人がくれたあめはあまかった。あますぎてべろがおかしくなりそう。めめりはあまく、舌をかんでみる。あめの味がべろからしみ出たような気がする。キャラメルの、味?めめりは顔を上げて、ちょっとだけ首をかたむけて、み、た。
「あ、じ……」
「鯵とちゃうで、味やで、あ、じ」
 ふふふと女の人はわらう。とても楽しそうだけど、めめり、なんで楽しいのかわからない。悲しくないけど、楽しいのかな。転がすうちに、がらんとあめが奥歯と奥歯の間にちょうどぴたり、はまった。
「キャラメルも飴もあまあまやん!メメリちゃんの服はあまあまやねえ、お花さんかわええなあ…うちもこのピンクあまあままではいかんけどちょいあまやない?」
 ひらりと女の人はめめりのワンピースのすそを触った。ふわふわのワンピース。いつから着てるかわからないワンピース。このひとの布をなでる手はやわらかくてやさしい。めめりはうっかり、あめが口から転げ落ちそうになる。
「服のあまあま度合いで言うたらメメリちゃんの方があまあまやから、キャラメルと飴もキャラメルの方があまいんやろなあ」
 からりと女の人はあめを転がしてわらった。
「あ、…の、」
「ん、なんやあ?」
 女の人はちょっと目を丸くして聞き返した。
「めめ、り…あめも、あまいとお、も…う」
 めめりはまた、うつむいた。しゃべるの、はずかしいから。ちらり、上目に女の人の顔をみやると、さっきより目が丸かった。それからじわじわ、満面の笑みに、なった。
「そや、そやねえ、ありがとうなあ」
 女の人はぽんぽんと頭をなでてくれた。少しあまいにおいが、した。割れそうなめめりのべろのあめも、未だとても、あまかった。

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