Silver spoon wars
ふしぎなお茶会、きらめく銀の匙

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!)くろこぉかもしれないくらいのくろこぉ
!)こぉずくんは出てきません
!)もはやくろこぉというかあられ&クロエ

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 館近くの公園には、今の時期はこのようにたくさんのシロツメクサが咲くのです。わかい緑の葉とさわやかな白い花が地面一面を覆って、とっても素敵!だからクロエ、春は毎日のようにここに来ちゃうのです。今日はあられさまも一緒ですよう!
 それはそうと、シロツメクサってとってもかわいいですよね。クロエ、だいすきなんです。思い出もたくさん、ありますから__。
「クロエおねーちゃん、みてみてゆびわ!」
 せっせとシロツメクサで花冠を編んでいたところ、そうあられさまはかわいらしい人差し指にはめたシロツメクサの指輪を見せてくれました。
「あら、素敵ですね〜!よく作るんです?」
 クロエがそうたずねると、あられさまはにっこり笑って指の上の白く小さな鞠をぽんぽんと指の腹でつつきました。
「そう!バンおにーちゃんとね、前はピンクのお花でつくったんだあ」
「あられさまはバンさまと仲良しですねえ」
 クロエ、思わず微笑みがこぼれました。そうだよ!と屈託のない笑みを浮かべるあられさま、やはりこの春の陽だまりがお似合いです。そこではっと気づきまして、クロエ、大急ぎで冠を完成させます。
「ちょっと待って下さいね__はい、これを被ればあられさま、春の花嫁みたいですよ!かわいい!」
 ふわりとあられさまの頭にシロツメクサの冠をのせました。するとやはり、思った通り、春の柔らかい陽を受けてあられさまはまるでシロツメクサの妖精のようです。やはりかわいい子は何をしてもかわいいのですね!とクロエ、心を撃ち抜かれてしまいました。かわいすぎて妹にしたい!って、口に出したら悠陽さまに怒られちゃうと思うのですけれども……。それとも写真でも撮っておけば悠陽さまに売れますかね?
「クロエおねーちゃんすごいね!きれいなかんむり、」
 そんなことを言われると照れちゃいますよお、と恥ずかしながら、クロエ、でれでれしちゃいます。恥ずかしくてでれでれしてるのかでれでれして恥ずかしいのかどっちなんでしょう!まああまり深いことは考えないでくださいね。考えたら負けというのはこのことです。
「いっぱいかんむり、つくったことあるの?」
 あられさまはそっと頭から冠をはずして手に取って眺めました。気に入ってくれたようで、とてもうれしい!クロエ、頬をやや染めてげんきにお答えします。
「そうですねえ、小さい頃につくってあげ……」
 そこまで言って、思わず口をつぐみました。思い出したのです、思い出を。瞬きした瞬間の瞼の裏に、懐かしい光景が浮かんだように思えたのです。庭の一角、シロツメクサのたくさん生えたところ、幼馴染みとふたりで座り込んで互いに冠を編む__。
「クロエおねーちゃん?」
 一瞬、ぼうっとしていたクロエですが、あられさまに声をかけられてはっと気を取り戻しました。あられさまはクロエの顔を覗き込んでいました。不思議そうに瞳を揺らがせて。
「ううん、なんでもありませんよう」
 クロエはいつものにこにこした笑い顔をつくりました。クロエは笑った顔がかわいいね、と小さい頃にあのひとに言ってもらった、笑顔です。
 そっかあ、とあられさまは呟きました。そうです、とクロエ、頷きます。
「こんなにきれいなかんむりだから、クロエおねーちゃんがこれ作ってあげた人、ぜったいうれしいよね!」
 と、あられさまはにこ!と笑ってぽんと冠を自分の頭に乗せました。その言葉にクロエが目を大きくさせると、あられさまはふふふとにっこり頬を緩めました。
「そうですねえ、そうだとうれしいです」
 クロエもつられてにっこりと微笑みました。心なしか、目頭が熱い。それを隠すように、あられさまには見せまいというように、クロエはすくっと立ちました。
「あられさま、そろそろ帰りましょうか」
 うん、と元気のいい返事をしたあられさまの手を引いて、クロエは館への道を戻りだしました。
 途中、あられさまと繋いでいる手とは反対の手で、そっと目尻に手をやりました。指が少し、濡れました。あのひとも、あの頃は、あられさまのように嬉しく思ってくださったのでしょうか、と、少し、ちらりと思いました。でも、いいのです。今日は、あられさまが喜んでくださったので。
 クロエはきゅ、とあられさまの手を握りました。その小さな手には、シロツメクサの指輪がまだはまっていました。




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