Silver spoon wars
ふしぎなお茶会、きらめく銀の匙

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 ・若干の下ネタ要素?につき、注意

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 その女に出会ったのは、俺が綺麗な汗を流しながら庭で仕事をしていた時のことだった。あの、と急に後ろから声をかけられた。振り向くと、そこにいたのは大人しそうな若い女の子だった。年はぱっと見、18くらい。腰あたりに伸ばした黒髪がつやつやと光っている。
「どうしましたか」
「本館までの道を知りたいんですけど」
 風が吹いて、女は飛びかけた麦わら帽子を手で抑えた。よく見るとこの女、ばっちりメイクしてやがる。人工的なナチュラルメイク、だ。ピンクのリップの塗られたくちびるはグロスでてかてかと光る。マジか、ここ執事なんていたんだ、ウケる、と笑う。
「なにか御用ですか」
 あらためて女の身なりを観察する。手にちまっとしたペーパーバックを持っていた。いかにも、こういう女が好きそうな柄だ。
「うちの者になにか渡すものがあるようでしたら、私から渡しておきますけど」
 あ、いや、と女は焦ったような声を上げると、慌てて自分の背中にペーパーバックを隠した。そして、チークののせられた頬をさらに赤く染めてはにかんだ。
「その、リクに会いたくって」


 翌日の昼、喫煙所としても使われている共用のテラスから外を眺めるリクを見つけた。
「よ、昨日の芋女は抱けたか?」
「そんな良くなかった?僕、結構カワイイ子選んできたつもりだったんだけど」
 後ろから声をかけても、リクはこちらを振り返ろうともしなかった。俺はリクの隣に歩み寄ると断りもせず煙草に火をつけた。まあ、喫煙所なんだから、好きに煙草ぐらい吸ったっていいだろう。
「なに言ってんだ、女は露出が多いほどイイんだよ」
「お兄さん古いなあ、今はああいう清楚系の方が流行ってるんだって」
 リクは至近距離で感じる煙草の匂いに一瞬顔を歪めたが、特になにも言わず、また遠くを見つめた。
「セフレに清楚なんて求めてんじゃねーよ、バカ」
「セフレとか直接的な表現やめてよ、もっとあるでしょ、オトナな関係、とかさ」
 リクはおかしそうに眼を細めて笑った。なんだこいつ、と少しむっとする。俺はやけくそに煙を吐き出した。
「知らねーよ、俺は好きな女しか抱かない」
「っはは、なにそれかっこいー、惚れるわ、僕もシャロさんに抱かれようかなぁ」
 リクがわざとらしく女っぽい甘ったるい声を出すものだから、俺もすこし笑っちまった。気持ち悪りぃ冗談言うなよ、と応じながらまた煙を吐き出した。今日はよく晴れている。
 


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