いろいろ | ナノ



夕飯を済ませてお風呂も入って、出された課題は、……もういいや。明日に回そう。ベッドに横になりながらそう考える。まだしっとりと湿っている髪の毛が頬をくすぐる。シャンプーの匂いがした。
私以外の家族はまだ起きていて、下から賑やかな声が聞こえる。そういえば今日はお笑い番組か何かの特番があるんだっけ。部活で疲労困憊の私には眠気の方が強かったらしく関係はないけれど。

暗い部屋で睡魔に誘われうつらうつらしていると、小さくインターホンが鳴ったのが聞こえ、いっそう賑やかになった。お父さんか誰かの知り合いでもきたのかな。夕飯をご馳走になりにきたんだろう。
そう結論づけて毛布を引き上げる。とろとろと心地よく眠りかけていたそのとき、足音がしてノックもせずに私の部屋のドアが開いた。弟だろうと決め込んで放っておくと、今度は突然ベッドにダイブされた。そしてそのまま毛布ごと私を抱きしめる。

眠くて重い瞼を持ち上げ、首だけ後ろに向ける。薄明かりの中見えたのは、いつもの特徴的な寝癖と赤いジャージ。ということは、さっきのお客さんは彼だったのか。

「……鉄朗くん……?」
「お前のくん付け気持ち悪いな」
「いまねむいの」

穏やかに目を細めて、くつくつと笑う声がした。あまり強くない力で抱き寄せられて、そのまま動かなくなる。

「どいてよー、眠いんだってば」
「俺も眠いんだよ」
「だったら自分の家で寝てよねー……。どうせ部活帰りでしょー?汗くさい……」
「ちゃんとシャワー浴びてきましたー」

自慢げに言われて何も返す気になれない。持ち上げていた頭を枕に落とすと、瞼を下ろした。眠くて仕方ないのだ。
それなのに後ろで髪の毛をいじられると眠れるものも眠れない。頬にかかった髪の毛を耳にかけてみたり、手で梳かしてみたり、気になって仕方ない。

「……鉄朗、眠いんじゃないの?」
「ん、眠い」
「寝るなら寝るで真面目に寝てください」
「いや、お前の髪の毛触ってると落ち着くんだって」
「私が眠れないの」
「なに、緊張してんの?」
「……ちがう」

また、小さく笑われた。私の眠気は最高潮だ。もう本当に知らない。ちょっと自棄になる。
ちょっと体を離すと、くっついてくる。さらに距離を開けると、抱きつかれる。いったいどうしたの、彼は。

「今日はやたら甘えてくるね」
「明日遠征だからな。充電だ充電」

鉄朗の低くて落ち着く声が鼓膜を揺する。背中も暖かくて心地良い。ああ、ほんとうに、このままだとほんとうに眠ってしまいそうだ。

「……私、このまま寝てもいい?」
「寝ろ寝ろ。俺も寝る」
「……明日は遠征なんでしょ……」
「早く起きれば問題ないだろ」

そう言い張る彼の主張はよく分からないが、夢の中に片足を突っ込んでいる私には、とりあえず彼が言うのだから問題はないのだろうと思えた。思考を放棄したともいえる。
そっと体を寄せると、彼の回された腕に力が入った。

「……じゃあ、おやすみ」
「おやすみ」

少し眠気を孕んだ鉄朗の返事が聞こえて、私はとうとう眠りに落ちた。意識が途絶えるそのときまで、髪の毛を梳かす心地よい指は止まることはなかった。



(140213)
コレジャナイ感がひどい

×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -