いろいろ | ナノ



じめじめとした暑い夜のことだった。冷たい場所を探して足を伸ばすと、ひんやりとしたものに触れた。そのまま誘われるように気だるい体を反転させて、それにくっつく。火照った体にちょうどいい。

「くっつくな、暑い」
「うぐ」

冷たい感覚にひと息ついたところで、いきなり頭を鷲掴みにされて引き離された。さっきまで私に背中を向けていたリヴァイが、ぎろりと睨みを飛ばす。

「痛い」
「もう用は済んだだろ、さっさと帰れ」
「余韻を楽しみたいんです」
「汚ねえ触るな」
「誘ったのはそっちじゃないの。しかも強引に。というかほぼ無理やり」

言いながら彼の手をかわしてもう一度くっつくと、さらに強く拒否される。しばらく続いたこのくだらない攻防に勝ったのは私だった。諦めたリヴァイがため息をついて再び沈黙する。彼の背中はとても冷たかった。

「……どうしたの?」
「何がだ」
「いつもと様子が違うから」
「――別に、どうもしねえ」

少しの間を空けて素っ気なく返される。どうもしないわけがない。
するりと腕を回すと、一瞬だけ筋肉が硬直して、また緩やかに弛緩する。気を張っているのだろうか。

「……部下たちのことは、残念だったと思う」
「だから、なんでもねえって言ってるだろう。いつものことだ、お前だってそうだろうが」
「さあ……あいにく私は、部下というものを持ったことがないので」
「……なんでそこで改まるんだよ」
「だって本当のことですし」

しれっと返すと、また肩越しに睨まれた。

「私はしょせん部下すら持たされない下っ端ですから。兵長のように、部下を持つ気持ちとそれを失う気持ちが、よく分かりません」
「……」
「でも、あなただけは失いたくないです」
「今この状態でそんな態度を取るな、気持ち悪い……」
「珍しく落ち込んでるから」
「落ち込まねえよ。……慣れた」

ため息をつくように大きく息を吐いたリヴァイの、その背中に額をくっつける。ひんやりする皮膚の奥から、鼓動が聞こえた。そのとき私は、やっと彼が生きて自分の目の前にいるのだと安堵する。たくさんいた上司があっという間にいなくなってしまうように、この人もいつか消えてしまうのではないかと考えると、それだけで恐ろしかった。
彼も部下を失ってしまうのは恐ろしいものなのだろうか。私にはそれさえ分からない。

「……いい加減離れろ、鬱陶しい」
「いやだ」
「誘ってんのか?だったらお望み通り足腰立たなくなるまでやってやるが」
「それは遠慮する」

小さな舌打ちが聞こえた。さらに体を近づけると、不機嫌そうに身をよじっていた。それなのに私を蹴落としたりしないのは、彼なりの優しさだろう。
着衣時にはあまり分からない引き締まった筋肉の向こうから、小さく鼓動が聞こえる。いつ聞けなくなるかも分からないこの音が、私の生き甲斐のひとつになっていた。自分でも馬鹿だとは思う。

ふと、リヴァイの手が、するすると私の腕を撫でた。そのまま私の手を握りこみ、そっとくちびるを落とす。

「手、暖けェな」
「そっちが冷たいだけだよ」
「自分の体温なんて分からねえよ」
「なら私の体温分けてあげようか」
「いらん」

小さく笑って、彼のその白いうなじにキスをした。今度こそ彼は嫌がらなかった。
それから私たちは眠りについた。たぶんお互い、ひさびさにゆっくりと眠れたと思う。
私はこのかすかな鼓動を自分に刻みこみながら、彼に回している腕にぎゅっと力を込めた。彼もまた、私の手を握り返してくれたような、そんな気がした。



劣情の群れより


(131112)
漫画を読み直してたらカッとなって書いた

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