5万打フリリク! | ナノ


突然だが、私は人見知りの激しい女である。初対面の人と仲良くなるには少なくとも1ヶ月はかかる。にやにやと不自然な愛想笑いを浮かべながら相手を伺い、コツコツと積み上げられた相手の情報と信頼とを見極めることで、ようやく仲良くなるのだ。非常にめんどくさい。もう一度言おう。非常にめんどくさい。
私と仲良くなった友人はこの長い『人見知り期間』を見事に脱出した者たちばかりである。彼女らの後日談によれば「かなりめんどくさい」との定評を得た。私自身がめんどくさいと思っているのだから、彼女たちからすればとんでもないめんどくささだろう。そこは素直に謝っておいた。

さて、そんな私には苦手としているものがある。初対面の人、チャラい人、馴れ馴れしい人である。全部ものじゃなくて人じゃねーかという突っ込みは甘んじて受けよう。しかし、本当にこの類の人たちは無理なのだ。
もう見てるだけでもつらいのに、話しかけられたりでもしたら私の警戒心は最大値までかけ上る。緊張で心臓だって痛くなる始末だ。このまま心筋梗塞で死ぬんじゃないかってくらいつらい。

そして、私は今、そのつらい状況に身を置いている。

「なあ、次ってなんだっけ」
「え、えーと……す、数学じゃなかったか、な……」
「あんがとー」
「どういたしまし、て」
「あっ」
「ひい!」
「そういやさ、昨日の番組見たー?」
「昨日……?」
「うん、お笑い芸人が出てる番組。確か9時からやってるやつ」
「ええと……宿題やってたから見てない、かな」
「えっ、見てねえの?今回のはめっちゃ面白かったのに」
「ごめんなさい……」
「いや、そこまで深刻な顔して謝られても困るけど」

そう言って笑うのは、私の前の席に座っている男子だ。名前は坂田銀時というらしい。そして、私の苦手な部類に入る項目を全て満たしている奇跡の男だ。
私の前の席というだけで心拍数は跳ね上がるのに、彼はなぜか事あるごとに私に話しかけてくる。もはや地獄。

私だって苦手意識を克服したいと思っている。だから坂田くんに話しかけられても逃げずにちゃんと会話をするし、そのおかげで坂田くんは苦手な部類に入らない気さくで優しい人だということも分かった。
でも、どんなに頑張ってもなかなか治らない私の人見知り性は、日に日にひどくなるばかりだった。
話題を振られてもまともに返すことすらできず、ちんぷんかんぷんなことばかり言ってしまう。どう答えれば相手が喜ぶのかが分からないのだ。坂田くんは気にしてるようには見受けられなかったけど、ちゃんと答えられない自分に自己嫌悪してしまう。

そんなことを数少ない友人に相談してみると、とんでもない答えを出されてしまった。

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