5万打フリリク! | ナノ


鼻歌を歌いながらお気に入りの着物を着つける。鏡でかんざしの具合を確認して、匂い袋を懐に忍ばせて部屋を出ようと襖を開けた。

「ぎゃあ!」
「おま……ぎゃあはねえだろうよ、ぎゃあは」

呆れたようにため息をしたのは、かの悪名名高い過激派攘夷志士、高杉晋助である。襖を開けて目の前にそんな強持てのお兄さんがいたらそりゃあびっくりするよね!

「びびびっくりしたー。人の部屋の前でなにしてんの」

未だ高鳴る心臓をなだめながらそう尋ねると、晋助は私を睨みつけるように見た。

「また俺に黙ってあの野郎のとこに行こうとしただろ」
「そんなことは……」

後ろめたさから思わず目を逸らす。そんな私を見て晋助はまたため息をついた。そんなため息ばかりつかなくてもいいじゃないか。

「前にも言っただろ。勝手にあいつのとこに行くなって」
「確かに言われたけど……。じゃあ、船降りていい?」
「駄目だ」

撃沈である。ちぇ、と頬を膨らませると、すごい勢いで睨まれた。怖い。

ちなみに晋助の言うあいつとは、彼の旧友であった坂田銀時のことだ。私と銀時はよく甘味巡りに行くのだが、晋助はどうやらこれが気にくわないらしい。私が出かける、と言うと、いつもふてくされたような顔をした。まあ曲がりなりにも恋仲である女が他の男と遊ぶのはまずいよなあ。そして、いつのまにか甘味巡りをする私の隣には晋助がいるのである。

「だいたい、指名手配されてるテロリストがのこのこと外に出ていいの?」
「別に構やしねえよ」
「いいんだ……」

うーん、と首をひねる。どうやってこの人を船に残そう。今日行くところは人が多いから、ちょっと晋助は危ないんだよなあ。

「今日はやめとこうよ」
「じゃあお前も外出んな」
「いやそれは無理かな」
「なら俺も行く」

なんか面倒くさい。なんで今日はこんなに食い下がってくるんだ。早くしないと待ち合わせに間に合わなくなってしまう!

「お願い!今度埋め合わせとして一緒にデートするから」
「……」

この一言で晋助は一気に狼狽えた。おお、なにやら葛藤していらっしゃる。そのまま頷いてくれれば、あとはこっちのものだ。
ふふふ、と内心ほくそ笑んでいると、未だに悩んだままの晋助がぽつりと口を開いた。

「……今日は、どこまで行くんだ」
「え、今日?今日はすぐそこの港町だよ。いろんなところから運ばれてくる新鮮な材料を使ってるから、すごく美味しいんだって」

港町はたくさんの商船や物で溢れ返っていて、そのぶん人も多い。晋助を連れていけば見つかる可能性だって高くなる。それだけは絶対に避けなくてはならない。
私はパン、と両手を合わせて頭を下げた。

「お願い!近場だし、すぐ帰ってくるから!」
「……」
「ね!」
「――分かった」

しばらくの沈黙の後に聞こえたその言葉に、私は顔を上げて晋助を見やった。晋助がむすっとしてはいるが許可はちゃんともらったのだからもう心配いらない。

「本当に!?」
「ああ、俺も行く」
「ありがとう!晋助も一緒に……え?」
「俺も、行く」
「……」

マジすか。

と、いうわけで、晋助くんもついてくるそうです。

back/next
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -