5万打フリリク! | ナノ


「なあなまえ」
「うっ……」

また綺麗な顔で微笑む。このまま黙っていても坂田くんはきっと諦めない。私は小さくため息を吐くと、ちらりと坂田くんを見てからしぶしぶ口を開いた。

「……お喋りが、すごく楽しい」
「えぇ〜?外見の特徴は?」
「……白い」
「てことは色白か」

いや、すいません。真剣に考えてるとこ失礼ですけど、あなたですってば。

「あと、さりげないとこで優しくて、でもぶっきらぼう」
「それ正反対じゃね」
「甘いものが大好きで、いつもお菓子持参してて」
「甘党かあ」
「たまに私にくれるんだけど意地悪してきたり」
「素直に渡せねえのな」
「私と話さない時は違うクラスの人とはしゃいでて、なのに私と目が合うといつも手を振ってくれる」
「あ、へえ……」
「こないだはいちご牛乳がないって言って私に泣きついてきて、私なんにも慰めてあげられなかった」
「……」
「最近はジャンプの一番後ろの作者の一言欄を見るのが好きで、」
「あの、なまえちゃん」

坂田くんが呼ぶまでずっと話していたみたいで、いつものどもり具合はほとんど消えていた。好きな人の話って、緊張すらも消すのかな。
うーん、と考えていると、ふと坂田くんと目が合った。ぽかんとした顔で、少し悩ましそうに私を見ている。

「……どうしたの?」
「え、いや、うん」

おお、珍しく坂田くんが戸惑ってらっしゃる。物珍しさからじっと見ていると、私の視線を感じた坂田くんはほんのりと頬を染め始めた。おお、なんかすごいぞ。

「あのさ、お前の好きなやつって、まさかと思うけど……俺……じゃないですよねすいません自意識過剰でした」

そう言って頭を下げる坂田くんに、私は「そうだよ」と思わず頷いてしまった。
わあああ言ったそばから恥ずかしい!なんでこんなあっさりしてんの自分!もうちょっと甘い雰囲気になるもんじゃないの告白って!
ぐわああああと頭を抱えかけたその時、ぽかんと私を見る坂田くんと目が合った。うわあ、私に負けず劣らず顔まっかだ。

「え、お、俺?俺なの?」
「う……あ、その、えと、ごめん」

困らせて。そう呟いてうつむいた。いきなり好きでもない女から告白されて、坂田くんはさぞ戸惑っているだろう。
なにやってんだろう、私。ばかみたいだ。頻繁に声をかけられるからって自惚れてたんだな。これで坂田くんは明日から私に話しかけてくれなくなるなあ。ちょっと、寂しい、な。

「――なまえ!」
「はい……」

ああ、怒られるかな。気持ち悪いんだよって。
そう思って顔を上げると、私の意に反する赤い顔の坂田くんがいた。

「あのさ、別に謝んなくていいから」
「うん」
「その、嬉しかったし」
「……えっ」

坂田くんの顔をまじまじと見る。いまこの人、なんて言った?え、それって、ええ?これはどう捉えればいいんだ。そういうこと?え、これ、どういうこと?
混乱する私に坂田くんは、さらなる爆弾を投下した。

「俺も、なまえのこと好きだったから」

――ずいぶん前から。
なあんだ、お互い両思いだったのね。そういえば坂田くんはもし私が違う人を好きになっていたら、どうしてたんだろうか。きっといじめただろうなあ。じゃあ今は?自分で自分をいじめるのかな。それはそれで面白いかも。
ああ、これからの学校生活が楽しみだなあ。
そこまで考えて、私の意識はぷつりと切れてしまった。



END
なおさまへ!

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