「……えー、はじめまして。ゆきさんとお付き合いさせて頂いている坂田銀時と申します」
静かな空気の中、緊張しながら銀時が自己紹介をする。目の前にはゆきの両親が座っていて、痛いくらい銀時を見ている。
しばらくの沈黙の後ゆきの父親がゆっくりと口を開いた。
「あー、君……金時とか言ったかね」
「銀時です」
「ウチの娘とはどういう関係で知り合ったのかね?」
流石金持ちの娘だ。親父のこと良く分かってやがる。
頭の隅でそんなことを考えながら、銀時は答えていく。
「前に、僕のところに依頼をしにきた時に知り合いました」
父親は、フンと言って腕を組む。それから父親はいくつかの質問を銀時にぶつけた。その度にスラスラと答えていく銀時に、父親は額に青筋を浮かべる。
どうやら、あっさりと答えられるのが気に入らないらしい。
「それでは金時くん」
「銀時です」
父親はにやりと笑うと、顎に手を添えて言った。
「君はあの万事屋のオーナーらしいが、娘と……ゆきと釣り合うという自信はあるのかね?」
「――はい?」父親の言葉に、銀時は思わず間抜けな声を出してしまった。父親は笑みをさらに濃くしながらもう一度尋ねる。
「だから、君のような人間がうちの娘と釣り合う自信があるのかと訊いているのだよ」
まるで自分を馬鹿にされているかのような口振りに、銀時は眉を釣り上げる。それはまるで、自分では無理だと言っているように聞こえたのだ。
「……ボクには何か至らない点でも?」
頬をひつらせながらもそう言うと、父親はふんと鼻で笑う。
「そんなの決まっているだろう。金はないし良くない噂も立っている。それに加え君は天然パーマじゃないか」
「天パ関係ねぇだろ!」
思わずそう言うと、隣でじっとしていたゆきが口を開いた。
「お父さん、私はお金とか天パとか関係ないの。ちょっとだらしないところもあるけど、優しいし隣にいて安心するのよ。本当にこの人が好きだから一緒にいたいの」
「ゆき……」
銀時がそう呟くと、ゆきは彼の方を見て微笑んだ。2人の間に穏やかな空気が流れる。
その様子を見ていたゆきの父親は、青筋をひくひくさせながら口を開いた。
「貴様……本気か?」
その言葉に、銀時は父親を見た。
「本気?当たり前だろ。でなきゃ俺はここにはいねえよ」
すると父親は勢い良く立ち上がり、銀時を指差した。
「貴様になどウチの娘はやらん!どうせ金が目当てなだけだろう!今すぐ出て行け、目障りだ!」
その言葉に銀時は我慢の限界に達し、彼も立ち上がる。
「テメェの汚ぇ金なんざこっちから願い下げだバーカ!」
「貴様……っ!」
「3ヶ月だ!」
そう言うと、銀時は3本指を突き立てた。
「3ヶ月間だけコイツを俺にくれ。その間に、少しでもテメェの気が変わればゆきは正式に俺がもらう。気が変わらなければ、俺はゆきを諦める。……それでどうだ?」
父親はしばらく銀時を睨んでいたが、やがてニヤリと笑うと口を開いた。
「いいだろう。と言っても、私の気持ちは変わんがね」
「上等だ。さっさと子離れさせてやるよクソジジイ」
こうしてゆきは、3ヶ月の間だけ銀時の嫁となることが決まったのだった。
(……ってなに言ってんの俺ェエエ!)
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