ゆきの予想だにしなかった言葉に、銀時は顔を引きつらせる。
「お……お嬢さん、アンタ自分で何言ってるか分かる?結婚ってのは好きな人同士がするモンだよ?」
「はい……結婚というのは語弊がありますね」
そう言うとゆきは頭を下げ、口を開いた。
「私の……婚約者の役を演じて欲しいんです」
婚約者、と新八が呟く。
「それは一体どういうことなんですか?実家で何かあったとか」
新八の質問に、ゆきは俯いたまま語り出した。
「私の家は……織物だけでなくいろんな星とを貿易する会社もやっているんです。おかげで、小さかったビルも今では大きくなりました」
そこで一度口を閉じたゆきは、小さく息を吐いた。膝の上では拳が作られ、俯いたまま続ける。
「……最近、ある男性と結婚しないかという話が持ち上がってきました。それが嫌だった私は、咄嗟に両親に婚約を考えている相手がいると嘘をついたんです。もちろん私にそんな恋人なんていません」
「……だから、嘘をつき通すために俺ン所に来たのか」
銀時が締めくくると、ゆきは暗い顔で頷いた。
「おかしなことを言ってるのはよく分かってます。でも私……政略結婚なんて嫌なんです……っ」
ピクリ、と銀時の眉が動いた。ゆきは目尻に涙を浮かべて続ける。
「結婚は好きな人と、と決めていた私にとってそれがあまりに嫌で……っ」
「銀さん……どうします?」
涙ぐむゆきを見ながら、銀時は唸る。
「んー、金は入るんだけどその内容がねえ」
「でも、せっかくきた仕事が」
「問題はそこなんだよ、眼鏡」
「眼鏡じゃねーから」
しばらく考えたあと、銀時はゆきに話しかけた。
「ゆきとか言ったっけ?一応訊いとくけど、報酬はいくら?」
するとゆきは目尻に浮かんだ涙を拭いながら片手を広げた。
「5万?微妙だな……」
「500万です」
「500万んんんんんん!?」
銀時はそう叫びながら立ち上がると、勢い良く頭を下げた。
「よろしくお願いします!!」
「ハァアアアア!?」
(ちょ…銀さんアンタ何勝手なこと言ってんの!?)
(バカおめっ…金がっぽり入ってくるだろーが!)
(アンタ本当最低だな!)
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